原付(50cc)バイクが生産終了したのはなぜですか?

「排ガス規制による原付(50cc)バイクの生産終了」は、実は日本の自動車・バイク業界の構造を変えた大きな出来事です。
以下で、背景・法的根拠・メーカーの対応を詳しく説明します👇


目次

🏛️ 1. 背景:排出ガス規制強化の流れ

日本では環境保護のため、二輪車の排出ガス規制を段階的に強化してきました。
その中でも特に決定的だったのが次の規制です。

🔹 平成28年規制(2016年)=「EURO4」相当

  • 国土交通省が2016年に導入した「平成28年排出ガス規制」は、欧州のEURO4規制と同等レベルの厳しい基準。
  • 対象:50ccを含む全ての二輪車(原付一種~大型)
  • 残留炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの排出量を大幅に低減することが求められました。

これにより、従来の2ストロークエンジンでは基準を満たすことが不可能になり、
さらに4ストロークでも新技術(触媒・電子制御燃料噴射など)の導入が必要となりました。


⚙️ 2. 技術的な問題:50ccではクリアが困難

50ccクラスは構造上、以下の理由で規制対応が難しいです。

問題点説明
🔧 小排気量エンジンが小さいため、触媒やセンサーを追加するとコスト・重量が割に合わない
💨 吸排気効率燃焼温度が低く、完全燃焼が難しいためCO・HCが増える
💴 コスト問題燃料噴射装置(FI)や酸素センサー搭載で1台あたりの原価が大幅上昇
⚡ 出力不足規制対応でパワーがさらに下がり、実用性が悪化

結果として、「環境基準を満たしてもユーザーに売れない」構造になりました。


🏢 3. メーカーの対応(生産終了の流れ)

メーカー主な動き
🟥 ホンダ「スーパーカブ50」「ジョルノ」「タクト」などを段階的に生産終了。代わりに「スーパーカブ110」「ダンク(電動化予定)」など125cc・電動モデルへ移行。
🟦 ヤマハ「JOG」「ビーノ(ガソリン)」を終了し、電動版「E-Vino」を投入。125cc「AXIS Z」「CYGNUS」へシフト。
🟨 スズキ「レッツ」「アドレスV50」などが生産終了。後継は「アドレス125」「スウィッシュ」など。
🇹🇼 海外メーカー(台湾・中国系)一部モデルを日本市場向けに販売継続するが、50ccより110ccが主流。

👉 2022〜2023年頃には、日本国内で新車の50ccガソリンバイクはほぼ姿を消しました。


📜 4. 法的根拠(技術基準)

排ガス規制は以下の法令に基づいています:

  • 道路運送車両法 第41条
    → 自動車・原動機付自転車は「保安基準」に適合しなければならない。
  • 道路運送車両の保安基準(第31条の2)
    → 二輪自動車の排出ガスに関する基準を定める。
  • 国土交通省告示 第615号(平成28年)
    → EURO4相当の新基準を正式に導入。

この告示によって、2020年9月以降に新規型式認定を受ける50cc車は基準を満たさなければ販売不可となりました。


🌍 5. 世界的な動向

  • 欧州ではEURO5(2020年〜)がさらに厳しく、50ccクラスはほぼ絶滅。
  • アジアでは主流が110〜125cc(日本だけが50cc市場を残していた)。
  • 日本メーカーもグローバル統一モデルを採用し、50ccを切り捨て。

⚡ 6. 現在と今後

  • 50cc相当の車種は今後、**電動化(EV原付)**で置き換えが進むと見られます。
    • 例:ホンダ「EM1 e:」、ヤマハ「E-Vino」
  • ガソリン50ccの「新車生産」はほぼ終了しましたが、中古市場ではまだ豊富
  • ただし、2030年以降は整備部品や排ガス規制の影響で、維持が難しくなる見込みです。

🔚 まとめ

項目内容
主な原因2016年導入の平成28年排出ガス規制(EURO4相当)
問題点小型エンジンではクリア困難・コスト高
結果各社が50cc生産終了・125ccやEVへ移行
法的根拠道路運送車両法・保安基準・国交省告示第615号
今後電動原付(EVスクーター)へ移行加速

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この記事を書いた人

東京都行政書士会墨田支部所属の富森翔太です。
相続、許認可、会社設立等の業務を行なっています。
行政や法律に関する疑問や手続きについてわかりやすく発信していきます。

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