【完全比較】株式会社と合同会社の違いとは?― 設立費用・責任・信用力まで行政書士が分かりやすく解説 ―

株式会社と合同会社はどちらも法人ですが、設立費用、経営方法、利益配分、役員任期、知名度などに違いがあります。会社設立で株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか迷っている方に向けて、それぞれのメリット・デメリット、設立費用、責任の範囲、向いている事業を行政書士が分かりやすく解説します。
【完全比較】株式会社と合同会社の違いとは?設立費用・責任・信用力まで行政書士が分かりやすく解説
会社を設立しようとすると、多くの方が最初に迷うのが「株式会社と合同会社のどちらにするか」です。
株式会社は日本で最も一般的な会社形態で、取引先や金融機関、求職者などにも広く知られています。
一方、合同会社は株式会社より設立費用を抑えやすく、会社運営も比較的シンプルです。
小規模な事業や家族経営、個人事業からの法人化などでは、合同会社が適している場合もあります。
ただし、「株式会社は信用力が高い」「合同会社は安い」という点だけで選ぶのはおすすめできません。
会社を設立した後は何年、何十年と事業を続ける可能性があります。
設立費用だけでなく、
経営者をどのように決めるか
利益をどのように分配するか
将来的に出資者を増やすか
事業を拡大する予定があるか
採用を重視するか
といった点まで考えて会社形態を選ぶことが重要です。
株式会社とは?
株式会社とは、株式を発行して出資を受け、その資金を利用して事業を行う会社です。
出資者を「株主」と呼び、原則として株主が会社の重要事項について意思決定を行います。
一方、実際の会社経営は取締役が担当します。
小規模な株式会社では、
株主=代表取締役
となっているケースも多いため、出資者と経営者の違いを意識することは少ないかもしれません。
しかし制度上は、
会社の所有者である株主
会社を経営する取締役
という役割が分けられています。
将来的に外部から出資を受けたり、多くの人が経営に関係したりする会社では、この仕組みが重要になります。
合同会社とは?
合同会社は、2006年の会社法施行によって導入された会社形態です。
英語では「Limited Liability Company」の頭文字から「LLC」と呼ばれることもあります。
合同会社では、出資者を「社員」と呼びます。
ここでいう社員とは、一般的な意味での従業員ではありません。
合同会社に出資している構成員という意味です。
原則として、社員自身が会社経営に参加します。
そのため、株式会社のように「株主」と「取締役」を明確に分ける仕組みとは異なります。
少人数で会社を経営する場合には、シンプルで使いやすい会社形態です。
株式会社と合同会社の違いを一覧で比較
主な違いを整理すると次のようになります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者 | 株主 | 社員 |
| 経営者 | 取締役 | 原則として社員 |
| 出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 定款認証手数料 | 原則3万~5万円 | 0円 |
| 登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
| 役員任期 | あり | 原則なし |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 利益配分 | 原則出資割合 | 定款で柔軟に設定可能 |
| 株式発行 | 可能 | 不可 |
| 上場 | 可能 | 不可 |
| 知名度 | 高い | 株式会社より低い傾向 |
| 経営の自由度 | 比較的高い | 高い |
| 1人設立 | 可能 | 可能 |
どちらが優れているというより、会社の目的や規模によって適した形態が変わります。
最大の違いは「所有」と「経営」の仕組み
株式会社と合同会社を理解するときに重要なのが、会社を所有する人と経営する人の関係です。
株式会社の場合
株式会社では、株主が会社へ出資します。
そして、取締役が会社を経営します。
例えばAさんが100%出資して会社を設立し、自分自身が代表取締役になることもできます。
一方、将来的には別の人へ株式を譲渡したり、新しい株式を発行して投資家から資金を集めたりすることも可能です。
事業を大きくしていく場合に適した仕組みといえます。
合同会社の場合
合同会社では、原則として出資者である社員自身が経営を行います。
例えばAさんとBさんが共同で出資して合同会社を設立した場合、AさんとBさんが会社の構成員となります。
ただし、定款によって業務を執行する社員を限定することも可能です。
少人数で経営する会社では、株式会社より柔軟に運営できる場合があります。
設立費用は合同会社の方が安い
会社設立時の大きな違いが費用です。
株式会社の設立費用
株式会社では主に、
定款認証手数料
定款の収入印紙代
登録免許税
などが発生します。
登録免許税は「資本金額×0.7%」で計算し、その金額が15万円未満の場合は15万円です。
また、公証役場で定款認証を受ける必要があります。
定款認証手数料は資本金等によって異なり、原則として3万円から5万円です。
紙の定款を作成すると、さらに4万円の収入印紙が必要になります。
電子定款であれば、この4万円の収入印紙は不要です。
合同会社の設立費用
合同会社では公証人による定款認証が不要です。
登録免許税についても「資本金額×0.7%」で計算し、その金額が6万円未満の場合は6万円です。
電子定款を利用すれば定款の収入印紙も不要になります。
そのため、自分で電子定款を作成する場合、合同会社は最低6万円程度の法定費用から設立できます。
設立費用を比較
電子定款を利用する場合の代表的な法定費用を比較すると、次のようになります。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款収入印紙 | 0円 | 0円 |
| 定款認証 | 3万~5万円程度 | 不要 |
| 登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
| 合計目安 | 約18万~20万円以上 | 約6万円以上 |
専門家へ依頼する場合には、別途報酬が必要になります。
「とにかく初期費用を抑えて法人化したい」という場合、合同会社には大きなメリットがあります。
紙の定款だと4万円高くなる
株式会社でも合同会社でも、紙で定款を作成すると原則として4万円の収入印紙が必要です。
一方、一定の方法で電子定款を作成すれば、この4万円はかかりません。
そのため会社設立では、電子定款を利用するケースが一般的になっています。
設立費用を比較するときは「紙の定款か電子定款か」も確認しておきましょう。
株式会社と合同会社で責任に違いはある?
「合同会社は責任が重いのでは?」
と思われることがありますが、株式会社も合同会社も、出資者は原則として有限責任です。
有限責任とは、基本的に自分が出資した金額を限度として責任を負う仕組みです。
例えば100万円を出資した会社が1,000万円の負債を抱えたからといって、株主や合同会社の社員が当然に個人財産から1,000万円を支払わなければならないわけではありません。
この点は株式会社と合同会社に大きな違いはありません。
有限責任でも個人が責任を負う場合はある
法人だから経営者個人が絶対に責任を負わないという意味ではありません。
例えば経営者自身が会社の融資について連帯保証をしていれば、会社が返済できなくなったときに個人へ請求される可能性があります。
また、取締役等が任務を怠ったことによる損害について、会社や第三者に対して責任を負う場合もあります。
「有限責任=何をしても個人に責任が及ばない」ではない点に注意しましょう。
信用力は株式会社の方が高い?
一般的な知名度では株式会社が有利です。
株式会社という名称は長く利用されており、多くの人が会社形態として認識しています。
一方、合同会社は2006年に導入された比較的新しい制度であるため、人によっては仕組みを知らない場合があります。
特に、
法人相手の営業が中心
大企業との取引を増やしたい
金融機関からの融資を重視する
従業員を積極的に採用する
会社のブランドイメージを重視する
という場合には、株式会社を選択するメリットがあります。
ただし、合同会社だから信用がないという意味ではありません。
実際に大手企業でも合同会社という会社形態は利用されています。
取引では会社形態だけでなく、業績、財務状況、事業実績、代表者の信用なども判断材料になります。
合同会社は経営の自由度が高い
合同会社の大きなメリットが、内部ルールを柔軟に設計できることです。
例えば利益配分です。
株式会社では、原則として保有する株式数に応じて配当を行います。
一方、合同会社では定款で定めることで、出資割合とは異なる利益配分を設定できます。
例えば、
Aさん:出資80万円
Bさん:出資20万円
だったとしても、Bさんが営業や技術面で会社へ大きく貢献するため、利益を50%ずつ分配するといった設計が可能です。
共同経営では、この柔軟性がメリットになることがあります。
株式会社には役員任期がある
株式会社の取締役には任期があります。
原則として取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までです。
ただし、非公開会社では定款によって最長10年まで伸長できます。
任期が終了すれば、同じ人が引き続き取締役を務める場合でも再任手続きと役員変更登記が必要です。
この登記には登録免許税もかかります。
合同会社の社員には株式会社の取締役のような法定の任期はありません。
長期間同じメンバーで小規模な会社を経営する場合には、合同会社の方が管理負担を抑えやすくなります。
決算公告にも違いがある
株式会社には決算公告義務があります。
原則として毎事業年度終了後、貸借対照表などを公告しなければなりません。
一方、合同会社には株式会社と同じ決算公告義務がありません。
小規模事業者にとっては、合同会社の方が運営上の事務負担を抑えやすいポイントの一つです。
税金は株式会社と合同会社で大きく違う?
法人税などの基本的な税制について、株式会社と合同会社だからという理由だけで大きな差が生じるわけではありません。
どちらも法人として、
法人税
法人住民税
法人事業税
消費税
などの対象になります。
そのため、
「合同会社にすれば税金が圧倒的に安くなる」
という理解は正しくありません。
税負担については会社形態だけではなく、利益額、役員報酬、経費、資本金、従業員の有無などによって変わります。
具体的な税務判断については税理士へ相談することをおすすめします。
株式会社が向いている人
次のような場合には株式会社を検討する価値があります。
- 将来的に事業を大きくしたい
- 外部から出資を受けたい
- 株式による資金調達を検討している
- 法人相手の取引が多い
- 採用活動を積極的に行いたい
- 会社としての知名度を重視したい
- 将来的な上場も視野に入れている
- 多数の出資者が参加する可能性がある
特に、会社の成長に合わせて出資者を増やす可能性がある場合には株式会社が使いやすいでしょう。
合同会社が向いている人
一方、次のような場合には合同会社が向いています。
- 会社設立費用を抑えたい
- 1人または少人数で経営する
- 家族経営を予定している
- 外部から大規模な出資を受ける予定がない
- 上場する予定がない
- 経営ルールを柔軟に決めたい
- 役員任期の管理を減らしたい
- 決算公告の負担を避けたい
個人事業から法人化し、そのまま1人で事業を続けるようなケースでは合同会社も有力な選択肢です。
株式会社設立の基本的な流れ
STEP1 会社の基本事項を決める
最初に、
会社名
本店所在地
事業目的
資本金
株主
取締役
事業年度
などを決めます。
STEP2 定款を作成する
会社の基本ルールとなる定款を作成します。
事業目的などは、設立後に行う許認可申請にも影響することがあります。
STEP3 公証役場で定款認証を受ける
株式会社では公証人による定款認証が必要です。
電子定款を利用すれば4万円の収入印紙は不要です。
STEP4 資本金を払い込む
発起人の口座などへ資本金を払い込みます。
STEP5 法務局へ設立登記を申請する
必要書類を準備して本店所在地を管轄する法務局へ登記申請します。
登記申請日が会社設立日となります。
なお、登記申請そのものを代理できるのは司法書士・弁護士です。
STEP6 設立後の届出を行う
会社設立後は、
税務署
都道府県・市区町村
年金事務所
労働基準監督署
ハローワーク
など、事業内容や従業員の状況に応じた届出を行います。
また、許認可が必要な事業を行う場合には別途申請します。
合同会社設立の基本的な流れ
STEP1 基本事項を決める
商号、本店所在地、事業目的、資本金、社員などを決めます。
STEP2 定款を作成する
合同会社でも定款は必要です。
特に複数人で設立する場合には、
業務執行
代表権
利益配分
意思決定
退社
などのルールを十分に検討しておくことが重要です。
STEP3 資本金を払い込む
社員となる人が出資金を払い込みます。
STEP4 設立登記を申請する
本店所在地を管轄する法務局へ登記申請します。
株式会社と違い、公証役場での定款認証はありません。
STEP5 設立後の届出・許認可を行う
税務・社会保険関係の手続きを行い、必要に応じて営業許可等を申請します。
許認可が必要な事業では「事業目的」に注意
会社を設立して、
建設業
宅建業
古物商
運送業
飲食店
人材紹介業
産業廃棄物収集運搬業
などを始める場合には、会社設立とは別に許認可が必要になることがあります。
ここで重要になるのが定款と登記簿の「事業目的」です。
例えば、会社設立後に建設業許可を取得する予定なのに、建設業に関する目的が全く記載されていなければ、後から目的変更が必要になる場合があります。
会社設立時には「今やる事業」だけでなく、「近い将来やる予定の事業」も考えて目的を設計することが重要です。
実例1 1人でコンサルティング会社を作る
個人事業主としてコンサルティング業を行っていたAさんが法人化するケースです。
従業員を雇う予定はなく、外部投資家から資金調達する予定もありません。
このような場合、合同会社にすれば設立費用を抑えながら法人化できます。
一方、取引先が大企業中心で「株式会社」という名称を営業上重視する場合には、初期費用が高くても株式会社を選択する考え方があります。
実例2 友人2人で会社を作る
AさんとBさんが共同で会社を設立します。
Aさんは多くの資金を出し、Bさんは技術や営業面で大きく貢献する予定です。
合同会社なら、定款によって出資割合とは異なる利益配分を設計できます。
ただし、共同経営では意見が対立した場合のルールも重要です。
会社設立時には、
誰が最終決定するか
利益をどう分けるか
一方が辞める場合どうするか
持分をどう扱うか
などを定款や契約で整理しておくことが重要です。
実例3 将来投資家から資金調達したい
現在は創業者1人ですが、将来的に投資家から資金調達し、事業を大きくしたいケースです。
この場合は株式会社が適している可能性が高くなります。
株式を発行して出資を受ける仕組みがあり、将来的な株主の増加にも対応しやすいためです。
実例4 家族だけで会社を経営する
夫婦や親子だけで会社を経営し、外部から出資を受ける予定もないケースです。
設立費用や維持管理の負担を抑えたいのであれば、合同会社を検討できます。
ただし、将来子どもへ事業承継する予定がある場合などは、持分の承継についても事前に検討しておく必要があります。
株式会社・合同会社選択チェックリスト
次の質問で「はい」が多い方を一つの目安にできます。
| 質問 | 株式会社向き | 合同会社向き |
|---|---|---|
| 設立費用を最優先で抑えたい | はい | |
| 1人で長く経営する予定 | はい | |
| 大企業との取引を重視 | はい | |
| 将来出資を受けたい | はい | |
| 上場を目指している | はい | |
| 家族経営を予定 | はい | |
| 利益配分を柔軟にしたい | はい | |
| 知名度を重視 | はい | |
| 役員任期をなくしたい | はい | |
| 採用活動を重視 | はい |
実際には事業内容や将来計画によって判断が変わるため、単純にチェック数だけで決める必要はありません。
Q&A
株式会社と合同会社はどちらが安く作れますか?
一般的には合同会社です。
電子定款を利用する場合、合同会社は登録免許税最低6万円から設立できます。
株式会社は登録免許税だけでも最低15万円で、さらに定款認証費用が必要です。
合同会社は信用力が低いですか?
株式会社と比べて知名度が低い傾向はありますが、合同会社だから信用がないというわけではありません。
事業実績や財務状況、取引内容なども信用を判断する重要な要素です。
株式会社も合同会社も1人で作れますか?
はい。どちらも1人で設立できます。
合同会社でも社長と名乗れますか?
「社長」は会社法上の正式な役職名ではないため、対外的に使用すること自体は可能です。
ただし、合同会社の法律上・登記上の立場としては「代表社員」などになります。
合同会社を後から株式会社にできますか?
可能です。
合同会社から株式会社へ組織変更する制度があります。
ただし、公告や登記など所定の手続きが必要です。
「とりあえず合同会社で始めて、大きくなったら株式会社にする」という方法もありますが、後から変更するには費用と手間がかかるため、将来計画も考えて選びましょう。
合同会社でも従業員を雇えますか?
もちろん可能です。
合同会社の「社員」は出資者を意味します。
一般的な意味での従業員を雇用することもできます。
合同会社でも銀行から融資を受けられますか?
合同会社だから融資を受けられないということはありません。
金融機関は事業計画、返済能力、財務内容、代表者の経験などを含めて審査します。
株式会社の方が税金は安いですか?
会社形態だけを理由として株式会社の税金が一律に安くなるわけではありません。
株式会社と合同会社はいずれも法人税等の対象です。
行政書士に会社設立を依頼できますか?
行政書士は、定款や議事録など会社設立に必要となる書類の作成、電子定款の作成、設立後の許認可申請などをサポートできます。
ただし、法務局への会社設立登記の代理申請は司法書士・弁護士の業務です。
株式会社と合同会社は「設立費用だけ」で選ばない
株式会社と合同会社の最も分かりやすい違いは設立費用です。
合同会社は定款認証が不要で、登録免許税も最低6万円のため、株式会社より低コストで設立できます。
しかし会社は設立して終わりではありません。
その後、
誰と経営するのか
どこまで事業を大きくするのか
外部から資金調達するのか
従業員を増やすのか
取引先からどのように見られるか
利益をどのように分配するのか
といったことを考える必要があります。
将来的な事業拡大や外部からの出資、知名度を重視するのであれば株式会社が適している場合があります。
一方、1人または少人数で事業を行い、設立・維持コストを抑えながら柔軟に経営したい場合には合同会社が有力な選択肢になります。
また、許認可が必要な事業を行う場合には、会社形態だけでなく、資本金や役員、事業目的、営業所などが許認可要件に影響することがあります。
会社を作ってから「この内容では許可を取れない」とならないよう、会社設立前に事業計画と許認可要件を一緒に確認しておくことが重要です。
富森行政書士事務所では、株式会社・合同会社の設立に伴う定款作成や電子定款、会社設立後に必要となる各種許認可についてご相談いただけます。
「株式会社と合同会社のどちらが自分の事業に合っているか分からない」「将来許認可を取る予定なので事業目的を確認したい」「電子定款を利用して設立費用を抑えたい」といった場合には、お気軽にご相談ください。
