「生活保護」は、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する制度です。
以下では、申請の条件・対象者・注意点を法律(生活保護法)に基づいてわかりやすく整理します。
🏛️ 法的根拠
- 根拠法令:生活保護法(昭和25年法律第144号)
- 目的(第1条)この法律は、日本国憲法第25条に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、
必要な保護を行い、その自立を助けることを目的とする。
🧾 生活保護の申請条件(基本要件)
生活保護は、「資産・能力・扶養・他制度」をすべて活用してもなお生活できない場合に受けられます。
この考え方を「補足性の原理」といいます(生活保護法第4条)。
① 生活に困窮していること
→ 現在の収入が、国の定める「最低生活費」を下回っていること。
この最低生活費は、世帯構成・地域・年齢などで異なります。
📍例:単身(東京都23区)の場合
月約13〜15万円程度が基準(2025年時点の目安)
② すべての資産を活用しても生活できないこと
(生活保護法第4条第1項)
保護は、資産、能力その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する場合に行う。
つまり、以下のような資産があれば、原則としてまずは処分・活用が求められます。
- 預貯金
- 不動産(持ち家)
- 自動車(例外あり)
- 貴金属などの換金性資産
ただし、以下は例外として「保有可」とされる場合があります:
- 通勤・通院に必要な自動車
- 最低限の家具・家電
- 子どもの教育資金
③ 働く能力を活かしてもなお生活できないこと
(生活保護法第4条第2項)
能力に応じて勤労に励まなければならない。
→ 働ける人は「就労指導」を受けることがあります。
ただし、高齢・病気・障害がある場合は免除されます。
④ 扶養義務者からの援助が受けられないこと
(生活保護法第4条第3項)
扶養義務者による扶養および他の法令による扶助を優先する。
→ 原則として、親・子・兄弟などの扶養義務者に「援助可能か」確認されます。
ただし、**実際に援助が見込めない場合(疎遠・拒否など)**は、保護が優先されます。
⑤ 他の社会保障制度を使っても足りないこと
(生活保護法第4条第3項)
→ 失業保険・年金・児童手当など、他の制度を優先的に利用。
それでも最低生活費に満たない分を生活保護で補います。
💴 支給される主な扶助(生活保護の内容)
生活保護は、状況に応じて8種類の「扶助(給付)」から成り立っています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ① 生活扶助 | 食費・光熱費など日常生活費 |
| ② 住宅扶助 | 家賃・地代・住宅維持費 |
| ③ 教育扶助 | 義務教育中の学用品・給食費など |
| ④ 医療扶助 | 医療費の自己負担分(無料) |
| ⑤ 介護扶助 | 介護保険の自己負担分 |
| ⑥ 出産扶助 | 出産費用の補助 |
| ⑦ 生業扶助 | 就職・技能習得に必要な費用 |
| ⑧ 葬祭扶助 | 葬儀に必要な最低限の費用 |
🏢 申請の流れ
- 市区町村の福祉事務所(生活保護担当課)に申請
- 必要書類を提出(本人確認・家計状況・資産証明など)
- 生活保護調査(家庭訪問・収入確認)
- 保護の可否決定(原則14日以内、最大30日)
- 支給開始(決定後、毎月支給)
📌 申請は「権利」であり、窓口で拒否されることは違法(生活保護法第7条)。
第7条 保護の申請をした者があるときは、速やかにその要否を決定しなければならない。
⚠️ よくある誤解と注意点
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「親族がいると申請できない」 | 扶養が実際に行われていなければ申請可能 |
| 「車を持っていると絶対にダメ」 | 通勤・通院に必要な場合は保有可 |
| 「申請は役所の許可がないとできない」 | 誰でも申請可能(法的権利) |
| 「外国人は受けられない」 | 永住者・定住者など在留資格があれば可能(法的保護) |
🧩 まとめ
| 要件 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 困窮状態 | 最低生活費以下の収入 | 第1条・第4条 |
| 資産の活用 | 資産を処分・活用しても不足 | 第4条 |
| 労働能力 | 働ける人は働く努力 | 第4条第2項 |
| 扶養関係 | 親族の援助が見込めない | 第4条第3項 |
| 他制度の活用 | 年金・保険を優先利用 | 第4条 |
| 申請権 | 申請は国民の権利 | 第7条 |


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