特定技能制度と技能実習制度の違いとは?
――外国人雇用を検討する前に必ず知っておくべき制度の基本を行政書士が解説
外国人雇用を検討している事業者の方から、次のようなご相談を受けることが非常に多くなっています。
- 「特定技能と技能実習の違いがよく分からない」
- 「外国人を雇いたいが、どの制度を使えばよいのか判断できない」
- 「介護や飲食の現場では、どちらの制度が適しているのか」
特定技能制度と技能実習制度は、
目的・考え方・運用方法が大きく異なる制度です。
この違いを正しく理解しないまま外国人を受け入れると、
制度違反や在留資格トラブルにつながるおそれがあります。
本記事では、行政書士の立場から、
特定技能制度と技能実習制度の違いを、実例を交えながら、法律初心者の方にも分かりやすく解説します。
技能実習制度とは
技能実習制度の目的
技能実習制度とは、
日本で培われた技能・技術・知識を、
開発途上地域等へ移転することを目的とした制度です。
あくまで**「国際貢献」**が建前上の目的であり、
労働力確保を主目的とした制度ではありません。
技能実習制度における外国人の位置づけ
技能実習生は、
法律上は「労働者」である一方、
制度趣旨としては技能を学ぶ立場とされています。
そのため、
- 転職は原則不可
- 職種・作業内容は厳密に限定
- 監理団体による管理
といった強い制約があります。
特定技能制度とは
特定技能制度の目的
特定技能制度は、
人手不足が深刻な産業分野において、
即戦力となる外国人労働者を受け入れることを目的とした制度です。
2019年に創設され、
日本が正式に「外国人労働力」を受け入れる制度として位置づけられました。
特定技能における外国人の位置づけ
特定技能外国人は、
制度上も実務上も、明確に労働者として扱われます。
そのため、
- 一定条件下で転職が可能
- 賃金は日本人と同等以上
- 労働時間・労働条件は労基法どおり
という特徴があります。
特定技能制度と技能実習制度の違い【比較】
両制度の違いを、基本的な観点から整理します。
| 項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
|---|---|---|
| 制度目的 | 技能移転・国際貢献 | 人手不足対策 |
| 外国人の立場 | 技能を学ぶ実習生 | 労働者 |
| 転職 | 原則不可 | 条件付きで可 |
| 受入分野 | 限定された職種 | 指定された産業分野 |
| 支援体制 | 監理団体 | 登録支援機関等 |
| 運用 | 技能実習法 | 出入国管理法+運用要領 |
このように、
目的と考え方が根本的に異なる制度であることが分かります。
特定技能1号と特定技能2号
特定技能1号とは
特定技能1号は、
特定産業分野において、
相当程度の知識または経験を必要とする業務に従事するための在留資格です。
在留期間は更新制で、
一定の要件を満たす外国人が対象となります。
特定技能2号とは
特定技能2号は、
より熟練した技能を有する外国人が対象となる在留資格です。
特定技能2号では、
- 在留期間の更新回数に制限がない
- 家族帯同が認められる場合がある
といった点で、特定技能1号と大きく異なります。
対象となる職種・分野の違い
技能実習制度の職種
技能実習制度では、
国が定めた「職種・作業」に限って実習が認められます。
例えば、
- 建設関係
- 農業関係
- 製造業関係
など、
作業内容が細かく指定されています。
特定技能制度の職種(産業分野)
特定技能制度では、
「特定産業分野」として指定された分野で就労が可能です。
代表的なものには、次のような分野があります。
- 介護
- 外食業(飲食)
- 建設
- 宿泊
- 農業
- ビルクリーニング
※すべての業種で外国人を雇用できるわけではありません。
介護分野における違い
技能実習と介護
技能実習制度における介護は、
一定の条件を満たした施設でのみ実習が可能です。
また、
あくまで「技能習得」が目的であり、
人員不足を補うための制度ではありません。
特定技能と介護
特定技能制度では、
介護分野の人手不足対策として外国人が受け入れられます。
身体介護や生活援助など、
現場の中心的業務に従事することが可能です。
ただし、
訪問介護の可否など、業務範囲については
運用要領に基づく厳格な判断が必要です。
飲食(外食業)分野における違い
技能実習と飲食
技能実習制度では、
一般的な飲食店業務は対象外となる場合が多く、
受入れは限定的です。
特定技能と飲食
特定技能制度では、
外食業(飲食)分野が明確に対象とされています。
調理、接客、店舗運営補助など、
飲食店の実務に幅広く従事することが可能です。
運用要領の重要性
運用要領とは
運用要領とは、
法律や省令を具体的に運用するための詳細なルールを定めた文書です。
特定技能制度では、
この運用要領に基づいて、
- 受入企業の要件
- 支援内容
- 業務範囲
などが細かく定められています。
技能実習と運用の違い
技能実習制度では、
監理団体を中心とした管理体制が特徴ですが、
特定技能制度では、
運用要領に基づく自主的かつ継続的な支援体制が求められます。
【実例】制度選択を誤らなかったケース
実例①:介護施設の場合
人手不足に悩む介護施設が、
技能実習修了者を特定技能へ移行させました。
結果として、
即戦力として安定的に勤務し、
長期雇用につながりました。
実例②:飲食店の場合
飲食店が当初、技能実習制度を検討していましたが、
業務内容と制度目的が合わないことが判明しました。
行政書士の助言により特定技能を選択し、
適法かつ安定した外国人雇用を実現しました。
制度選択で注意すべき点
- 技能実習=安価な労働力ではない
- 特定技能=どの業種でも使える制度ではない
- 運用要領を無視した運用は違反リスクが高い
そのため、
制度の理解と事前確認が不可欠です。
行政書士ができるサポート
行政書士は、次のような支援を行うことができます。
- 特定技能制度と技能実習制度の整理・比較
- 職種・業務内容の適合性確認
- 在留資格申請書類の作成支援
- 運用要領に基づく体制整備の助言
※紛争性がある場合は、弁護士対応となります。
まとめ
- 特定技能制度と技能実習制度は全く異なる制度
- 技能実習は「育成」、特定技能は「労働」
- 介護・飲食では特定技能が中心
- 運用要領の理解が不可欠
- 専門家の関与で制度違反リスクを回避できる
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