「スポーツジムのシャワー室にも許可が必要?」公衆浴場法の対象になるケースを行政書士が分かりやすく解説

スポーツジムやフィットネスクラブのシャワー室にも公衆浴場法の営業許可が必要になる場合があります。「銭湯ではないから関係ない」と考えるのは要注意です。どのような施設が公衆浴場に該当するのか、シャワーのみの場合の考え方、サウナ・浴槽を設置する場合、許可要件、申請方法、開業前の注意点を行政書士が分かりやすく解説します。
「スポーツジムのシャワー室にも許可が必要?」公衆浴場法の対象になるケースを行政書士が分かりやすく解説
スポーツジムやフィットネスクラブを開業するとき、
「トレーニング後に使えるシャワールームを作りたい」
「会員専用だから公衆浴場にはならないだろう」
「お風呂ではなくシャワーだけなら許可はいらないのでは?」
と考える方もいるでしょう。
しかし、スポーツ施設に設置する入浴設備については、公衆浴場法の規制を確認する必要があります。
厚生労働省は、公衆浴場法の適用を受ける「その他の公衆浴場」の具体例として、ゴルフ場やアスレチックジムなどのスポーツ施設に併設される浴場を明示しています。
東京都も、健康ランドやサウナと並んで「スポーツ施設付帯の浴場」をその他の公衆浴場の例として案内しています。
そのため、一般的な銭湯ではないから公衆浴場法は関係ない、とは限りません。
特にスポーツジム、フィットネスクラブ、パーソナルジムなどにシャワー、浴槽、サウナなどを設置する場合は、物件契約や内装工事を始める前に管轄保健所へ確認することが重要です。
この記事では、スポーツジムと公衆浴場法の関係、許可が必要となる考え方、シャワーだけの場合、会員限定の場合、サウナを設置する場合、申請までの流れについて解説します。
そもそも公衆浴場とは?
公衆浴場という言葉を聞くと、一般的には「銭湯」をイメージするのではないでしょうか。
しかし、公衆浴場法が対象としている施設は銭湯だけではありません。
公衆浴場法では、公衆浴場を「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義しています。
そして、業として公衆浴場を経営する場合には、原則として都道府県知事の許可が必要です。保健所設置市や特別区では、市長または区長が許可権者となります。
つまり、
「入浴料を取っている銭湯か」
だけで判断する制度ではありません。
施設の利用方法や営業実態から、公衆浴場法の対象となるかを確認する必要があります。
公衆浴場には大きく2種類ある
公衆浴場は大きく、
「一般公衆浴場」
「その他の公衆浴場」
に分けられます。
| 区分 | 主な施設 |
|---|---|
| 一般公衆浴場 | いわゆる銭湯など |
| その他の公衆浴場 | 健康ランド、サウナ、スポーツ施設付帯浴場など |
一般公衆浴場は、地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用される、いわゆる銭湯などです。
一方、「その他の公衆浴場」には、健康ランド、サウナ、スポーツ施設に併設された浴場など、さまざまな施設があります。
スポーツジムを開業するときに問題になるのは、主に後者です。
「うちは銭湯ではないから公衆浴場営業許可は不要」という判断は適切ではありません。
スポーツジムの浴場も公衆浴場になる?
なる場合があります。
厚生労働省は「その他の公衆浴場」の具体例として、
ゴルフ場
アスレチックジム等のスポーツ施設
に併設される浴場を挙げています。
東京都でも「スポーツ施設付帯の浴場」がその他の公衆浴場の例として明示されています。
つまり、スポーツジムそのものが公衆浴場なのではなく、ジムに設置した入浴設備について公衆浴場法の適用が問題になります。
大型フィットネスクラブだけではありません。
小規模なジムであっても、設置する設備や利用形態によって判断が必要です。
シャワー室だけでも公衆浴場法の確認が必要?
ここは特に注意したいポイントです。
「浴槽がなければ絶対に公衆浴場にはならない」と自己判断するのはおすすめできません。
公衆浴場法は「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」を対象としており、浴槽が存在することだけを法律上の定義としているわけではありません。
実際にシャワー設備がどのような形態で公衆浴場法の対象となるかについては、施設の利用実態や自治体の取扱いを含めて確認する必要があります。
そのため、
「シャワーだけだから許可不要」
「浴槽を置かなければ大丈夫」
と設備計画を進めるのではなく、図面を持って管轄保健所へ事前相談するのが安全です。
特に複数の利用者が使用するシャワールームを営業施設として継続的に提供する場合には、開業前に確認しておきましょう。
会員専用なら「公衆」ではない?
「会員しか使えないから公衆浴場ではない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、会員制だから当然に対象外になるわけではありません。
東京都は「業として」の考え方について、反復継続の意思を持ち、その行為に社会性がある場合には対象となり、不特定多数を対象としているか、対価を取っているかは問わないと案内しています。
したがって、
会員限定
月額制
予約制
無料シャワー
といった事情だけで、公衆浴場法の対象外になるとは判断できません。
例えば「月額1万円のジム会員だけが無料で利用できるシャワー」であっても、シャワー利用料を別途徴収していないことだけを理由として許可不要になるわけではありません。
営業全体の一部として継続的に入浴設備を提供している実態を見る必要があります。
無料なら許可はいらない?
これも誤解しやすいポイントです。
「入浴料を取らなければ公衆浴場営業ではない」とは限りません。
東京都は、公衆浴場法における「業として」の判断について、対価を取るかどうかを問わないとしています。
例えば、
ジム利用料 月額10,000円
シャワー利用料 0円
という料金体系だったとしても、
「シャワーは無料だから公衆浴場法は関係ない」
と単純には判断できません。
スポーツジムという事業に付随して入浴設備を反復継続して提供しているのであれば、設備や利用方法を含めて判断する必要があります。
サウナを設置する場合はさらに注意
近年は、
スポーツジム+サウナ
パーソナルジム+サウナ
フィットネス+スパ
といった複合型施設もあります。
サウナについても公衆浴場法との関係を確認しなければなりません。
厚生労働省は「その他の公衆浴場」の例としてサウナを明示しています。
さらに、厚生労働省では公衆浴場法におけるサウナの営業許可や基準に関する調査・情報提供も行われています。
そのため、
「サウナだけで浴槽はない」
という場合でも、許可不要とは限りません。
サウナを設置する場合には、設備設計段階で管轄保健所に相談することが特に重要です。
スポーツジムならすべて公衆浴場許可が必要なの?
もちろん、スポーツジムを営業するだけで公衆浴場営業許可が必要になるわけではありません。
例えばトレーニングマシンだけを設置し、入浴設備を一切設けていないジムであれば、スポーツジムであること自体を理由として公衆浴場法の許可が必要になるわけではありません。
問題になるのは、
シャワー
浴槽
サウナ
水風呂
その他の入浴設備
などを設置するケースです。
また、他法令に基づいて設置され、別途衛生措置が講じられている一定の施設については、公衆浴場法の適用外となる場合があります。厚生労働省は、旅館業法の適用を受ける宿泊施設の浴場や、一定の労働関係法令に基づく浴場などを例として挙げています。
一般的なスポーツジムについては、こうした例外に当然に該当するわけではありません。
公衆浴場営業許可はどこに申請する?
公衆浴場を業として経営する場合には、公衆浴場法に基づく営業許可を受ける必要があります。
申請先は施設所在地を管轄する行政機関です。
東京都内でも、施設所在地によって管轄する保健所が異なります。
東京都も、公衆浴場を営業する場合には所在地を管轄する保健所へ問い合わせるよう案内しています。
スポーツジムを開業する場合は、
「会社の所在地」
ではなく、
「実際にスポーツジムを営業する施設の所在地」
を基準として管轄保健所を確認します。
許可には構造設備基準がある
公衆浴場営業許可は、申請書を提出すれば自動的に取得できるものではありません。
施設が一定の構造設備基準に適合する必要があります。
公衆浴場法では、公衆浴場の設置場所や構造設備が公衆衛生上不適当である場合などには、許可しないことができるとされています。
具体的な基準については、都道府県などが条例で定めます。
厚生労働省も、公衆浴場の許可について、条例で定める構造設備基準などに従う必要があると説明しています。
そのため、自治体によって確認すべき具体的な内容が異なる場合があります。
なぜ内装工事前の相談が重要なのか
スポーツジムの公衆浴場許可で最も避けたいのが、
物件契約
↓
設計
↓
内装工事
↓
シャワー・サウナ設置
↓
保健所へ相談
↓
設備が基準に適合していないことが判明
という流れです。
東京都も、公衆浴場施設について増築・改築を行った結果、構造設備基準を満たさなくなることがあり、工事規模によっては新たな許可申請が必要になる場合があると案内しています。
新規開業でも同じように、完成後に問題が見つかると修正工事が必要になる可能性があります。
特にシャワールームや浴室は、
給排水
換気
防水
排水勾配
壁・床
脱衣設備
衛生設備
など建築・設備工事と密接に関係します。
後から変更すると費用が大きくなりやすいため、図面段階で保健所へ確認することが重要です。
公衆浴場営業許可の申請では何を確認する?
公衆浴場法施行規則では、許可申請について主に、
申請者の住所・氏名等
公衆浴場の名称・所在地
公衆浴場の種類
営業施設の構造設備
その他自治体が定める事項
を記載した申請書を提出することとされています。法人の場合には法人名、所在地、代表者などについても記載します。
実際には自治体ごとの条例・規則に基づく書類や図面なども確認する必要があります。
そのため、全国どこでも完全に同じ書類を提出すればよいというわけではありません。
STEP1 ジムの設備内容を決める
最初に、どのような設備を設置する予定なのか整理します。
例えば、
トレーニングルーム
更衣室
シャワー
浴槽
水風呂
サウナ
パウダールーム
などです。
特にシャワー、浴槽、サウナを設置する場合には、公衆浴場法の確認が必要になる可能性があります。
STEP2 管轄保健所へ事前相談する
施設所在地を管轄する保健所へ相談します。
この段階では、
所在地
施設の用途
利用者
会員制度
料金体系
営業時間
シャワー数
浴槽の有無
サウナの有無
などを整理しておくと話が進みやすくなります。
可能であれば、予定している店舗の平面図も用意します。
STEP3 公衆浴場法の対象になるか確認する
施設の営業方法や設備から、公衆浴場法の許可対象となるか確認します。
「同じようなジムが近所で営業しているから大丈夫」と判断するのは危険です。
似た施設でも、
設備
利用者
営業方法
既存許可
所在地
自治体の条例
などが異なる可能性があります。
自分の施設について確認しましょう。
STEP4 構造設備基準を確認する
許可が必要であれば、自治体の条例等に定められた構造設備基準を確認します。
ここで重要なのは、工事が終わってから確認するのではなく、設計図の段階で確認することです。
設計会社や内装業者にも、公衆浴場営業許可を取得する予定であることを伝えておきましょう。
STEP5 内装工事を進める
保健所との事前相談を踏まえて工事を進めます。
途中で設備やレイアウトを大きく変更した場合は、変更内容について再確認した方がよいケースもあります。
「最初に相談した図面」と「完成した施設」が大きく違ってしまわないよう注意します。
STEP6 営業許可申請を行う
必要な申請書、図面、添付書類などを準備し、管轄保健所へ申請します。
施設完成後には、構造設備が基準に適合しているか確認されます。
自治体ごとに手続きや必要書類が異なるため、開業日から逆算して準備しましょう。
STEP7 許可後も衛生管理を続ける
公衆浴場営業は、許可を取れば終わりではありません。
営業者には衛生管理基準を守ることが求められます。
厚生労働省は、公衆浴場について換気、採光、照明、保温、清潔など、条例で定められた衛生・風紀基準に従って運営する必要があると説明しています。
浴槽や循環設備などを設ける施設では、レジオネラ属菌対策を含めた衛生管理も重要です。
スポーツジム開業前チェックリスト
□ シャワーを設置する予定がある
□ 浴槽を設置する予定がある
□ サウナを設置する予定がある
□ 水風呂を設置する予定がある
□ 会員限定だから許可不要だと自己判断していない
□ シャワーが無料だから許可不要だと自己判断していない
□ 施設所在地を管轄する保健所を確認した
□ 内装工事前に保健所へ相談した
□ 平面図を準備した
□ 構造設備基準を確認した
□ 設計会社・施工会社に許可取得予定を伝えた
□ 開業日から逆算して申請スケジュールを組んだ
□ 許可以外に必要な法令・手続きも確認した
複数当てはまる場合は、物件や工事計画を確定する前に相談することをおすすめします。
実例1 月額制フィットネスジムにシャワーを設置
月額8,000円の会員制フィットネスジムを開業し、トレーニング後に会員が利用できるシャワールームを設置するケースです。
シャワー料金自体は無料とします。
この場合、
「会員限定」
「シャワー無料」
という理由だけで公衆浴場法の対象外とは判断できません。
営業施設として継続的に利用者へ入浴設備を提供するため、設備内容や営業形態について管轄保健所へ確認することが重要です。
実例2 パーソナルジムに個室シャワーを設置
完全予約制で、一度に利用する客が少ないパーソナルジムにシャワーを設置するケースです。
「大型ジムではないから関係ない」と思うかもしれません。
しかし、公衆浴場法の適用は単純に施設の規模や利用人数だけで決まるものではありません。
小規模施設であっても、具体的な営業方法を保健所へ説明して判断を確認することが大切です。
実例3 ジムにサウナと水風呂を併設
トレーニング設備に加え、サウナと水風呂を設置して「トレーニング後のリカバリー」をサービスの特徴にするケースです。
サウナは厚生労働省がその他の公衆浴場の具体例として挙げている施設です。
このような施設では、単純なスポーツジムとしてだけではなく、公衆浴場営業許可を前提に施設計画を検討する必要性が高くなります。
実例4 居抜きのジムをそのまま引き継ぐ
以前もスポーツジムだった物件を居抜きで借りるケースです。
前のテナントにシャワーや浴場設備があり、そのまま使用できるとしても、
「前の店が営業できていたから自分もそのまま営業できる」
とは限りません。
営業者が変わる場合には必要な手続きを確認する必要があります。
現在、公衆浴場法には営業譲渡に伴う営業者の地位の承継制度がありますが、単なる物件の賃借や設備の引継ぎが当然に営業許可の承継になるわけではありません。
居抜き物件の場合も、契約前に既存許可の内容を確認しましょう。
Q&A
Q1 スポーツジムには必ず公衆浴場営業許可が必要ですか?
スポーツジムそのものを営業するという理由だけで、公衆浴場営業許可が必要になるわけではありません。
ただし、スポーツ施設に入浴設備を設置する場合には公衆浴場法の対象となる可能性があります。
厚生労働省もスポーツ施設に併設される浴場を「その他の公衆浴場」の例として挙げています。
Q2 シャワーしかありません。許可は不要ですか?
浴槽がないことだけを理由に自己判断するのは避けた方がよいでしょう。
シャワーの設備や利用方法、自治体の取扱いなどを含め、施設所在地を管轄する保健所へ確認することをおすすめします。
Q3 会員限定のジムなら大丈夫ですか?
会員制であることだけで当然に対象外になるわけではありません。
東京都は「業として」の判断について、不特定多数を対象としているか、対価を取るかは問わないと案内しています。
Q4 シャワー代を無料にすれば許可はいりませんか?
無料であることだけでは判断できません。
東京都は「業として」公衆浴場を提供しているかについて、対価の有無を問わないとしています。
Q5 サウナだけなら許可はいりませんか?
サウナについても公衆浴場法の対象となる可能性があります。
厚生労働省は、サウナを「その他の公衆浴場」の例として明示しています。
Q6 どのタイミングで保健所へ相談すればいいですか?
できるだけ早い段階がおすすめです。
特に理想的なのは、物件契約や内装工事を確定する前です。
少なくとも大規模な給排水・浴室工事を開始する前には、施設図面を持って相談しておきましょう。
Q7 すでに内装工事をしてしまいました
まずは施設所在地を管轄する保健所へ相談し、現在の構造設備が基準に適合するか確認します。
基準を満たしていない場合には、設備変更や追加工事が必要になる可能性があります。
Q8 行政書士に依頼できますか?
公衆浴場営業許可は行政書士が取り扱うことのできる許認可業務の一つです。
申請書類の作成、必要書類の整理、図面作成、保健所との事前相談などについてサポートを受けることができます。
ただし、施設の設計や建築基準法上の判断など、建築士その他の専門家による確認が必要になる部分もあります。
複合的な施設の場合には、行政書士、設計会社、施工会社などが早い段階から情報を共有して進めることが重要です。
スポーツジムは物件契約・内装工事の前に許可の確認を
スポーツジムやフィットネスクラブにシャワー、浴槽、サウナなどを設置する場合、「銭湯ではないから公衆浴場法は関係ない」と考えるのは危険です。
厚生労働省は、ゴルフ場やアスレチックジムなどスポーツ施設に併設される浴場を、公衆浴場法の対象となる「その他の公衆浴場」の例として明示しています。
また、
「会員限定だから大丈夫」
「無料だから大丈夫」
「浴槽がなくシャワーだけだから絶対に大丈夫」
といった判断も避けるべきです。
公衆浴場法の適用や具体的な構造設備基準については、施設の内容と所在地の条例等を踏まえて確認する必要があります。
特に注意したいのは相談するタイミングです。
スポーツジムのシャワーやサウナは給排水、防水、換気など大掛かりな設備工事を伴うことがあります。
完成してから基準に適合していないことが判明すると、開業延期や追加工事につながりかねません。
これからスポーツジム、フィットネスクラブ、パーソナルジム、サウナ併設施設などを開業する場合には、物件契約・設計・内装工事の早い段階で必要な許認可を整理することをおすすめします。
富森行政書士事務所では、公衆浴場営業許可をはじめ、店舗・施設の開業に関する各種許認可申請をサポートしています。
「シャワーだけでも許可が必要なのか確認したい」「ジムにサウナを併設したい」「物件を契約する前に必要な許可を調べたい」といった場合も、お気軽にご相談ください。
