車庫証明の「使用の本拠の位置」とは?法人・支店・自宅と駐車場が違う場合を行政書士が解説

車を購入したり、会社名義の車を登録したりする際に必要となることがある「車庫証明」。
申請書を見ていると、
「使用の本拠の位置」
「保管場所の位置」
という似たような項目が出てきます。
「会社名義の車なら本店所在地を書けばいいの?」
「支店で使う車なのに、本店が遠方にある場合はどうする?」
「自宅と月極駐車場の住所が違っても大丈夫?」
と迷う方も多いのではないでしょうか。
実は、車庫証明では「車の所有者の住所」「使用の本拠の位置」「保管場所の位置」は、それぞれ別の意味を持っています。
今回は、東京都で普通自動車の車庫証明を申請する場合を中心に、「使用の本拠の位置」とは何なのか、法人・支店・営業所の場合はどう考えるのかを分かりやすく解説します。
車庫証明とは
車庫証明の正式名称は「自動車保管場所証明書」です。
普通自動車について、新規登録、移転登録、住所・事業所所在地などの変更登録を行う場合には、原則として車庫証明が必要になります。
例えば、次のようなケースです。
・新車を購入した
・中古車を購入した
・自動車の所有者が変わった
・引っ越しによって住所が変わった
・会社の事業所が移転した
ただし、地域や登録内容によって取扱いが異なる場合があります。
また、軽自動車については普通自動車と同じ「車庫証明」ではなく、対象地域では保管場所の「届出」が必要となります。
車庫証明で出てくる3つの「場所」
まず整理しておきたいのが、車庫証明に関係する住所です。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 申請者の住所 | 自動車を使用する人・法人の住所 |
| 使用の本拠の位置 | 実際にその自動車の使用・管理の拠点となる場所 |
| 保管場所の位置 | 実際に自動車を保管する駐車場・車庫 |
個人の場合には、
「申請者住所=使用の本拠の位置」
となることが多いため、それほど問題になりません。
一方、法人の場合は、本店と実際に車を使用する事業所が異なることがあり、ここで判断が難しくなります。
「使用の本拠の位置」とは?
使用の本拠の位置とは、簡単にいうと、
「その車を実際に使用・管理する拠点」
です。
必ずしも自動車の所有者の住所と一致するわけではありません。
例えば、東京都に本店を置く会社が千葉県の支店で営業車を使用・管理している場合を考えてみましょう。
この場合、
申請者の住所 → 本店所在地
使用の本拠の位置 → 実際に車を使用・管理する支店
保管場所の位置 → 支店で使用する駐車場
となることがあります。
つまり、
「法人名義だから必ず登記上の本店所在地が使用の本拠になる」
とは限りません。
実際にどこを拠点として車を使用するのかが重要です。
法人の「本店」と「使用の本拠」が違っても申請できる?
可能です。
法人では、本店所在地とは別の営業所や支店で車を使用するケースは珍しくありません。
例えば、
本店:大阪府
営業所:東京都墨田区
駐車場:東京都墨田区
という会社が、墨田区の営業所で営業車を使用する場合です。
この場合、実態に応じて墨田区の営業所を「使用の本拠の位置」として申請することが考えられます。
ただし、本店所在地と使用の本拠の位置が異なる場合には、本当にその場所が事業所として存在し、自動車の使用・管理の拠点となっているのか確認されることがあります。
使用の本拠を証明する資料を求められることがある
申請者の住所と使用の本拠の位置が異なる場合には、使用の本拠の位置を確認できる資料が重要になります。
例えば法人であれば、
・営業所や支店の存在を確認できる資料
・公共料金の領収書
・郵便物
・事業所の使用実態が確認できる資料
など、実際にその場所を事業拠点として使用していることが分かる資料を求められることがあります。
ここで注意したいのが、
「その住所を申請書に書けば使用の本拠として認められる」
わけではないという点です。
使用実態のない場所を形式的に使用の本拠とすることはできません。
登記されていない営業所でも使用の本拠にできる?
法人の車庫証明でよくある質問です。
「支店登記していない営業所だから、使用の本拠にはできないのでは?」
と思われる方もいます。
しかし、車庫証明における使用の本拠は、登記上の本店・支店だけで機械的に判断するものではありません。
実際にその場所で事業活動を行い、自動車を継続して使用・管理する拠点となっているかが重要です。
ただし、登記されていない事業所の場合には、その場所が実際に事業所として使用されていることを確認するため、資料の提示を求められる可能性があります。
特に、
・設立直後の営業所
・開設したばかりの支店
・シェアオフィス
・レンタルオフィス
・自宅兼事務所
などでは、事前に管轄警察署へ確認しておくと安心です。
駐車場は使用の本拠から2km以内
車庫証明では、どこでも好きな駐車場を使用できるわけではありません。
保管場所には法律上の要件があります。
主な要件は次のとおりです。
□ 道路以外の場所であること
□ 使用の本拠の位置から2kmを超えないこと
□ 自動車が道路から支障なく出入りできること
□ 自動車全体を収容できること
□ 保管場所として使用する権利があること
特に注意したいのが「2km」です。
基準となるのは、
「申請者の住所から駐車場まで」
ではなく、
「使用の本拠の位置から保管場所まで」
です。
法人で本店と営業所が離れている場合には、この違いが非常に重要になります。
駐車場に車体全部が入らなければならない
保管場所には、自動車全体を収容できる必要があります。
例えば、
「車の前部分が道路にはみ出す」
「駐車区画より車体が大きい」
という状態では、適切な保管場所とは認められない可能性があります。
車庫証明の配置図には、
・駐車場の寸法
・出入口の幅
・前面道路の幅
・駐車位置
などを記載します。
大型SUVやミニバン、商用車などを購入する場合には、契約する駐車場へ実際に車両が収まるか事前に確認しておきましょう。
自分の土地なら「自認書」
駐車場が申請者自身の所有する土地や建物である場合には、原則として「保管場所使用権原疎明書面(自認書)」を使用します。
例えば、
「自宅の敷地内に駐車する」
というケースです。
一方、月極駐車場など他人が所有する土地を使用する場合には、取扱いが異なります。
月極駐車場なら「使用承諾証明書」など
他人が所有する駐車場を使用する場合には、その場所を車庫として使用する権利があることを証明する必要があります。
代表的なのが「保管場所使用承諾証明書」です。
駐車場の所有者や管理者などに作成してもらいます。
ただし、一定の記載事項を満たした駐車場賃貸借契約書の写しなどで対応できる場合もあります。
ここで注意したいのは、使用承諾証明書を申請者自身が勝手に作成することはできないという点です。
駐車場の所有者・管理者等へ作成を依頼する必要があります。
親名義の土地を使う場合は?
「実家の駐車場だから自認書でいいのでは?」
と思われることがあります。
しかし、申請者本人の所有地でなければ、自分の土地として自認書を提出することはできません。
例えば、子どもが親名義の土地を保管場所として使用する場合には、原則として土地所有者である親から保管場所使用承諾証明書を取得することになります。
家族だから自動的に自己所有扱いになるわけではありません。
共有名義の土地の場合
夫婦などで土地や建物を共有しているケースもあります。
例えば、自宅敷地が夫婦共有名義となっており、その場所を車庫として使用する場合です。
このようなケースでは、共有者との関係を踏まえた権原確認が必要になります。
「自宅だから自認書を1人で書けばよい」と決めつけず、所有関係を確認してから書類を準備しましょう。
所在図と配置図の違い
車庫証明では「所在図・配置図」も重要な書類です。
所在図
使用の本拠と駐車場の位置関係を示す図面です。
どこに事業所や自宅があり、どこに駐車場があるのかを分かるようにします。
配置図
駐車場内部の具体的な配置を示す図面です。
例えば、
・前面道路
・駐車場入口
・入口の幅
・駐車区画
・駐車区画の縦横寸法
・建物との位置関係
などを記載します。
特に月極駐車場では、
「駐車場のどの区画を使用するのか」
まで分かるように記載することが重要です。
申請する警察署はどこ?
車庫証明の申請先は、
「保管場所の所在地を管轄する警察署」
です。
ここも間違えやすいポイントです。
例えば、
自宅:墨田区
駐車場:台東区
というケースで、保管場所としての要件を満たしている場合、申請先を判断する基準になるのは駐車場の所在地です。
自宅住所を管轄する警察署とは限りません。
法人の場合も同様で、
「本店を管轄する警察署」
ではなく、
「実際の保管場所を管轄する警察署」
へ申請します。
東京都の車庫証明の手数料
2026年9月現在、東京都で普通自動車の車庫証明を警察署窓口から申請する場合の申請手数料は2,400円です。
電子申請の場合は2,300円です。
なお、現在は保管場所標章制度が廃止されているため、以前のように車のリアガラスなどへ車庫証明の標章を貼る必要はありません。
古いインターネット記事では「申請手数料+標章交付手数料」と説明されている場合がありますので、現在の制度と混同しないよう注意しましょう。
車庫証明は即日発行ではない
警察署へ申請した日に、その場で車庫証明が発行されるわけではありません。
東京都の場合、警視庁は申請から交付まで3日から7日間程度を案内しています。
そのため、
「明日、自動車の名義変更をしたいから今日車庫証明を取る」
というスケジュールでは間に合わない可能性があります。
自動車の購入や名義変更の日程が決まっている場合には、余裕を持って申請しましょう。
また、交付された車庫証明は、証明日から概ね1か月以内に運輸支局へ提出することが案内されています。
早すぎても遅すぎても手続きに影響するため、自動車登録の日程と合わせて準備することが重要です。
普通自動車と軽自動車では手続きが違う
車庫証明について調べる際に、普通自動車と軽自動車を混同しないよう注意が必要です。
普通自動車では、一定の場合に「保管場所証明申請」を行います。
一方、軽自動車は対象地域において「保管場所届出」を行います。
| 車種 | 主な手続き |
|---|---|
| 普通自動車 | 保管場所証明申請 |
| 軽自動車 | 保管場所届出 |
| 普通自動車で車庫だけ変更 | 保管場所届出 |
軽自動車だから保管場所に関する手続きが一切ない、という意味ではありません。
使用の本拠が届出対象地域にあるかも含めて確認する必要があります。
法人の車庫証明で特に注意したいケース
法人の場合には、個人申請より確認事項が増えることがあります。
本店と営業所が別の都道府県にある
実際に車を使用する営業所がどこなのかを確認します。
営業所を開設したばかり
その場所で事業を行っていることを確認できる資料が十分にそろっていないことがあります。
登記上の支店ではない
登記の有無だけでなく、実際の事業所としての使用実態を整理する必要があります。
駐車場の契約名義が法人ではない
誰が駐車場を使用する権利を持っているのか確認が必要です。
本店移転直後
法人登記、自動車登録、車庫証明など複数の変更手続きが関係する可能性があります。
法人の車庫証明では、単に申請書を記入するだけでなく、
「誰が車を使用するのか」
「どこで管理するのか」
「どこに保管するのか」
を一貫して説明できる状態にしておくことが重要です。
車庫証明申請前のチェックリスト
申請前に次の項目を確認しておきましょう。
□ 普通自動車か軽自動車か
□ 使用の本拠の位置はどこか
□ 保管場所は使用の本拠から2km以内か
□ 車両全体を駐車区画へ収容できるか
□ 道路から支障なく出入りできるか
□ 駐車場を使用する権利があるか
□ 自己所有なら自認書を準備したか
□ 他人所有なら使用承諾証明書等を準備したか
□ 所在図・配置図を作成したか
□ 保管場所を管轄する警察署を確認したか
□ 法人の場合、本店と使用の本拠が異ならないか
□ 使用の本拠が異なる場合、その実態を確認できる資料を準備できるか
法人申請では特に「本店所在地をそのまま書けばよい」と考えず、実際の車両管理の状況を確認することが大切です。
車庫証明の基本的な流れ
STEP1 使用の本拠を確認する
個人なら自宅、法人なら本店・支店・営業所など、実際に車を使用・管理する拠点を確認します。
STEP2 保管場所の要件を確認する
2km以内か、車両が収容できるか、使用権原があるかを確認します。
STEP3 必要書類を準備する
申請書、所在図・配置図、自認書または使用承諾証明書等を準備します。
STEP4 管轄警察署へ申請する
保管場所の所在地を管轄する警察署へ提出します。
STEP5 車庫証明を受領する
東京都では、通常、申請から交付まで一定の日数が必要です。
STEP6 運輸支局で自動車登録を行う
新規登録、移転登録、変更登録など必要な手続きを行います。
車庫証明だけ取得して手続きが完了するわけではありません。
まとめ
車庫証明で特に間違えやすいのが、
「申請者の住所」
「使用の本拠の位置」
「保管場所の位置」
の違いです。
個人の場合は同じ場所になることも多いですが、法人の場合は、
本店所在地
↓
実際に車を使用する営業所
↓
契約している駐車場
がすべて異なることもあります。
重要なのは、登記上の住所だけを見るのではなく、「実際にどこを拠点としてその車を使用・管理するのか」を確認することです。
また、保管場所は使用の本拠から2km以内であること、自動車全体を収容できること、適切な使用権原があることなどの要件を満たす必要があります。
特に法人の車庫証明では、本店と使用の本拠が異なるケースや、新しく営業所を開設したケースなどで追加確認が必要になることがあります。
車庫証明と自動車登録をスムーズに進めるためにも、車の購入や名義変更を行う前に、使用の本拠・駐車場・必要書類を整理しておきましょう。
富森行政書士事務所では、車庫証明の申請書作成、所在図・配置図の作成、警察署への申請・受領、自動車登録などの手続きをサポートしています。
法人の本店と使用の本拠が異なる場合など、必要書類が分からないケースについてもご相談いただけます。
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