電気工事業登録とは?建設業許可との違い・主任電気工事士・必要書類・申請方法を行政書士が解説

電気工事業を始めるには電気工事士の資格だけでなく、電気工事業法に基づく登録や届出が必要です。登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者の違い、主任電気工事士の要件、必要書類、費用、申請方法を東京都の手続きを中心に行政書士が分かりやすく解説します。
電気工事業登録とは?建設業許可との違い・主任電気工事士・必要書類・申請方法を行政書士が解説
住宅のコンセント増設や照明工事、店舗の電気設備工事などを事業として行う場合、「電気工事士の資格があればすぐに開業できる」と考えている方も少なくありません。
しかし、電気工事士の資格と、事業者として電気工事業を営むための手続きは別の制度です。
電気工事を事業として行う場合には、電気工事業の業務の適正化に関する法律、いわゆる電気工事業法に基づき、事業内容に応じて「登録」「届出」「通知」などの手続きが必要になります。
また、すでに建設業許可の「電気工事業」を取得している会社であっても、電気工事業法上の手続きが自動的に不要になるわけではありません。
この記事では、東京都で電気工事業を始める場合を中心に、電気工事業登録が必要となるケース、建設業許可との違い、主任電気工事士の要件、必要書類、費用、開業までの流れについて分かりやすく解説します。
電気工事士の資格と電気工事業登録は別の制度
まず整理しておきたいのが「電気工事士」と「電気工事業者」の違いです。
電気工事士は、一定の電気工事を実際に施工するための資格です。
一方、電気工事業登録は、事業者として電気工事業を営むための手続きです。
例えば、第二種電気工事士の免状を取得した個人が独立して住宅の電気工事を請け負おうとする場合、電気工事士免状を持っているというだけで営業できるわけではありません。
電気工事業者として必要な登録等を行う必要があります。
つまり、
「電気工事を施工できる資格」
と
「電気工事を事業として営むための手続き」
は分けて考える必要があります。
電気工事業者には4つの区分がある
電気工事業法では、建設業許可の有無と施工する電気工作物の種類によって、事業者の区分が変わります。
| 区分 | 建設業許可 | 主な対象 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | なし | 一般用電気工作物等を含む | 登録 |
| みなし登録電気工事業者 | あり | 一般用電気工作物等を含む | 届出 |
| 通知電気工事業者 | なし | 自家用電気工作物のみ | 通知 |
| みなし通知電気工事業者 | あり | 自家用電気工作物のみ | 通知 |
自社がどの区分になるかによって手続きが異なるため、申請書を作成する前に事業内容を整理することが重要です。
登録電気工事業者とは?
建設業許可を持っておらず、一般住宅や小規模店舗などの一般用電気工作物等に関する電気工事を行う場合は、原則として登録電気工事業者として登録します。
個人事業主として電気工事業を独立開業するケースなどで多く利用される区分です。
東京都内だけに営業所を設置する場合には、東京都への登録申請を行います。
みなし登録電気工事業者とは?
建設業許可を受けている事業者が一般用電気工作物等に関する電気工事業を行う場合は、「みなし登録電気工事業者」となります。
ここで注意したいのが、
「建設業許可を取ったから電気工事業法の手続きは不要」
ではないという点です。
建設業許可を受けていても、電気工事業法に基づく届出が必要です。
建設業許可の電気工事業を取得した後、この届出を忘れてしまうケースには注意が必要です。
通知電気工事業者とは?
一般用電気工作物等の工事を行わず、自家用電気工作物に関する電気工事だけを行う事業者については、登録ではなく通知の対象となります。
工場や一定規模以上のビルなどの設備工事を専門に行う場合などに関係する区分です。
ただし、自家用電気工作物の電気工事には第一種電気工事士免状など、工事内容に応じた資格が必要となります。
建設業許可と電気工事業登録の違い
電気工事業を始める際に最も混同されやすいのが、建設業許可との関係です。
両者は別の法律に基づく制度です。
| 項目 | 電気工事業登録 | 建設業許可 |
|---|---|---|
| 主な法律 | 電気工事業法 | 建設業法 |
| 目的 | 電気工事業務の適正化 | 建設工事の適正な施工等 |
| 主な基準 | 主任電気工事士、器具など | 経営業務管理、営業所技術者、財産的基礎など |
| 有効期間 | 5年 | 5年 |
| 一定規模以上の工事 | 別途建設業許可を検討 | 必要 |
| 建設業許可取得後 | みなし登録等の手続き | 許可のみで電気工事業法上の手続き完了とはならない |
小規模な電気工事だけを行う場合、建設業許可が不要なケースであっても、電気工事業登録は必要になる可能性があります。
逆に、建設業許可を取得しているからといって、電気工事業法上の届出を省略できるわけでもありません。
この二つを別々に確認することが重要です。
主任電気工事士とは?
一般用電気工事を行う営業所には、原則として営業所ごとに「主任電気工事士」を置かなければなりません。
主任電気工事士は、一般用電気工事の作業を適正に管理する役割を担います。
東京都も、登録電気工事業者およびみなし登録電気工事業者が一般用電気工事を行う特定営業所ごとに、主任電気工事士を置く必要があると案内しています。
第一種電気工事士の場合
第一種電気工事士は、所定の要件を満たせば主任電気工事士になることができます。
ただし、第一種電気工事士については法令上必要となる講習の受講状況なども確認されます。
第二種電気工事士の場合
第二種電気工事士の場合は、免状を取得しただけですぐ主任電気工事士になれるわけではありません。
原則として、第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事について3年以上の実務経験が必要です。
そのため、独立開業を考えている第二種電気工事士の方は、自分の実務経験が主任電気工事士の要件を満たしているかを事前に確認する必要があります。
第二種電気工事士の実務経験で注意するポイント
第二種電気工事士が主任電気工事士になる場合、実務経験を証明する必要があります。
単に、
「電気関係の会社に3年以上勤務していた」
というだけで当然に認められるわけではありません。
どの事業者の下で、どのような電気工事に従事していたのかが重要です。
東京都の新規登録申請でも、主任電気工事士が第二種電気工事士の場合には実務経験証明書の原本が求められています。
独立直前になって以前の勤務先へ証明を依頼すると時間がかかる場合があります。
開業を検討した段階で、証明可能な実務経験があるか確認しておきましょう。
電気工事業登録には営業所ごとに器具が必要
電気工事業者には、営業所ごとに検査に必要な器具を備え付ける義務があります。
一般用電気工事のみを行う営業所では、例えば、
・絶縁抵抗計
・接地抵抗計
・抵抗および交流電圧を測定できる回路計
などが必要になります。
自家用電気工作物の工事を行う場合には、さらに必要となる測定器具があります。
「資格者がいるから登録できる」というだけではなく、営業所の設備面についても確認が必要です。
東京都で電気工事業登録をする場合の申請先
東京都内だけに営業所を設置する場合は、東京都が申請先となります。
一方、東京都と千葉県など、2つ以上の都道府県に営業所を設置する場合は経済産業省の管轄となります。
例えば、
本店・営業所とも東京都内
→東京都
東京都と千葉県に営業所
→経済産業省
というように、営業所の設置場所によって申請先が変わります。
会社の本店所在地だけで判断しないよう注意しましょう。
東京都の電気工事業登録の必要書類
建設業許可を持っていない事業者が東京都で新規登録する場合、主に次のような書類を準備します。
・登録申請関係書類
・誓約書
・主任電気工事士の電気工事士免状の写し
・第一種電気工事士の場合は必要な講習受講履歴
・主任電気工事士が従業員の場合の誓約書
・主任電気工事士が第二種電気工事士の場合の実務経験証明書
・法人の場合は履歴事項全部証明書
・個人の場合は住民票
などです。
申請者や主任電気工事士の状況によって必要書類が変わります。
特に第二種電気工事士を主任電気工事士にする場合は、実務経験証明書の準備が重要です。
東京都の新規登録手数料はいくら?
東京都で建設業許可を持っていない事業者が登録電気工事業者として新規登録する場合、手数料は22,000円です。
更新登録の手数料は12,000円となっています。
なお、これは東京都へ納付する行政手数料です。
行政書士へ申請書類の作成や申請手続きを依頼する場合には、別途行政書士報酬が必要になります。
電気工事業登録の有効期間は5年間
登録電気工事業者の登録には有効期間があります。
有効期間は5年間です。
引き続き電気工事業を営む場合には更新登録が必要になります。
東京都では、登録期間満了日の30日前から1週間前までに更新申請書類を送付するよう案内しています。
建設業許可も5年間の有効期間がありますが、電気工事業登録とは別に期限管理が必要です。
複数の許認可を持っている会社では、更新期限を一覧化して管理しておくとよいでしょう。
電気工事業を開業するまでの流れ
STEP1 どの電気工事を行うか決める
まず、
一般住宅の電気工事を行うのか
工場やビルなどの自家用電気工作物だけを扱うのか
両方を扱うのか
を整理します。
これによって登録か通知かなど、必要な手続きが変わります。
STEP2 建設業許可の有無を確認する
次に建設業許可を持っているか確認します。
建設業許可がなければ登録電気工事業者、建設業許可があればみなし登録電気工事業者など、区分が変わります。
STEP3 主任電気工事士を確認する
一般用電気工事を行う場合には、営業所ごとに主任電気工事士を確保します。
第一種電気工事士なのか、第二種電気工事士なのかを確認し、第二種の場合には3年以上の実務経験を証明できるか確認します。
STEP4 営業所と器具を準備する
営業所を決め、必要な測定器具を準備します。
複数の営業所を設置する場合には、それぞれの営業所について主任電気工事士や器具の要件を確認します。
STEP5 必要書類を作成・収集する
法人の履歴事項全部証明書、主任電気工事士の免状、実務経験証明書などを準備します。
第二種電気工事士の実務経験証明が必要な場合は、勤務先等との調整に時間がかかることもあるため早めに進めましょう。
STEP6 東京都へ登録申請する
東京都内だけに営業所を設置する場合には東京都へ申請します。
東京都では郵送、メール、窓口による申請方法が案内されています。
新規登録では、書類審査後に送付される納入通知書によって手数料を納付します。
STEP7 登録後に営業を開始する
登録後は、法令に従って電気工事業を行います。
登録後にも標識の掲示、帳簿の備付け・保存、必要な器具の備付けなどの義務があります。
登録後も必要な義務がある
電気工事業登録は、登録証を受け取れば終わりではありません。
営業開始後も電気工事業法上の義務を守る必要があります。
帳簿を5年間保存する
営業所には帳簿を備え、
注文者の氏名・住所
電気工事の種類
施工場所
施工年月日
主任電気工事士等や作業者の氏名
配線図
検査結果
などを記録し、5年間保存する必要があります。
登録内容が変わったら変更手続きを行う
会社名や所在地、営業所、主任電気工事士など、登録事項に変更が生じた場合には変更手続きが必要になります。
法人登記を変更しただけで電気工事業登録の情報まで自動的に変更されるわけではありません。
会社移転や役員変更などを行う際には、関連する許認可もまとめて確認することが重要です。
電気工事業登録のチェックリスト
これから電気工事業を始める場合には、次の項目を確認してみてください。
□ 行う予定の電気工事の種類を整理した
□ 一般用電気工作物等を扱うか確認した
□ 自家用電気工作物を扱うか確認した
□ 建設業許可の有無を確認した
□ 自社が登録・届出・通知のどれに該当するか確認した
□ 主任電気工事士を確保した
□ 第二種電気工事士の場合は3年以上の実務経験を確認した
□ 実務経験を証明できる勤務先等を確認した
□ 営業所を決めた
□ 必要な測定器具を準備した
□ 営業所が複数の都道府県にまたがらないか確認した
□ 必要書類を準備した
□ 開業予定日から逆算して申請準備をしている
電気工事業登録でよくある失敗
電気工事士免状だけで開業できると思っていた
最も基本的な勘違いです。
電気工事士は施工資格であり、電気工事業を営む事業者としての登録等とは別です。
独立開業するときには両方を確認しましょう。
建設業許可を取得したので何もしなくてよいと思っていた
建設業許可を取得している場合でも、一般用電気工事を行うのであれば、電気工事業法に基づく届出が必要になります。
建設業許可取得後に電気工事業を開始する場合は、みなし登録の手続きを忘れないよう注意しましょう。
第二種電気工事士ならすぐ主任になれると思っていた
第二種電気工事士が主任電気工事士になる場合には、免状交付後3年以上の電気工事に関する実務経験が必要です。
資格を取得してすぐ独立する場合には、この要件が問題になることがあります。
営業所を増やしたのに手続きをしていない
電気工事業では営業所の状況が重要です。
営業所の追加や変更を行った場合には、必要な変更手続きを確認する必要があります。
特に別の都道府県へ営業所を新設すると、申請先自体が変わる可能性があります。
電気工事業登録の具体例
実例1 第二種電気工事士が東京都で独立する場合
第二種電気工事士として電気工事会社に勤務していた方が独立し、東京都内で住宅のコンセントや照明設備などの電気工事を請け負うケースです。
建設業許可を取得していない場合には、登録電気工事業者としての登録を検討します。
本人を主任電気工事士とする場合には、第二種電気工事士免状交付後3年以上の実務経験を証明できるかが重要になります。
実例2 建設業許可を持つ会社が電気工事を始める場合
建設業許可を取得している会社が、新たに一般用電気工事を事業として行うケースです。
「建設業許可があるから手続き不要」と判断するのではなく、みなし登録電気工事業者としての届出を確認します。
実例3 千葉県にも営業所を開設する場合
これまで東京都内だけに営業所があった電気工事業者が、事業拡大によって千葉県にも営業所を開設するケースです。
営業所が2つ以上の都道府県にまたがることになるため、管轄が変わります。
営業所を新設してから考えるのではなく、移転・新設前に必要な手続きを確認することが重要です。
電気工事業登録に関するよくある質問
Q. 個人事業主でも登録できますか?
はい。
法人だけでなく個人事業主でも登録できます。
東京都では、法人の場合は履歴事項全部証明書、個人の場合は住民票など、申請者の形態によって必要書類が異なります。
Q. 第二種電気工事士だけでも独立できますか?
可能ですが、一般用電気工事を行う営業所には主任電気工事士が必要です。
本人が主任電気工事士になる場合、第二種電気工事士免状交付後3年以上の実務経験などの要件を確認する必要があります。
Q. 建設業許可がなくても電気工事業登録できますか?
できます。
建設業許可を持っていない事業者について、登録電気工事業者という制度があります。
ただし、請け負う工事の規模によっては別途建設業許可が必要になるため、両制度を確認する必要があります。
Q. 建設業許可があれば電気工事業登録は不要ですか?
「登録」という形式ではありませんが、電気工事業法上の手続き自体が不要になるわけではありません。
建設業許可を持つ事業者が一般用電気工事を行う場合には、みなし登録電気工事業者として届出を行います。
Q. 登録の有効期間はありますか?
登録電気工事業者の登録期間は5年間です。
引き続き営業する場合には更新登録が必要です。
Q. 東京都の新規登録はいくらですか?
建設業許可を持っていない事業者が登録電気工事業者として新規登録する場合、東京都の手数料は22,000円です。
Q. 自宅を営業所にできますか?
自宅であることだけを理由として直ちに不可となるものではありませんが、実際に営業所として使用できること、必要な主任電気工事士を配置できること、必要な器具を備え付けられることなどを確認する必要があります。
賃貸住宅の場合には、賃貸借契約や使用規約上、事業利用が認められているかも確認しておきましょう。
電気工事業の開業は「資格・登録・建設業許可」を分けて確認する
電気工事業を始める際に重要なのは、「電気工事士の資格を持っているから大丈夫」と考えないことです。
確認すべきポイントは、
電気工事を施工する人の資格
電気工事業法上の登録・届出・通知
主任電気工事士
営業所と測定器具
建設業許可の必要性
のそれぞれです。
特に、第二種電気工事士として独立する場合には、主任電気工事士となるための実務経験を証明できるかが重要になります。
また、すでに建設業許可を持っている会社についても、電気工事業法上の届出を忘れないよう注意が必要です。
富森行政書士事務所では、電気工事業登録をはじめ、建設業許可や事業開始に必要となる各種許認可についてご相談いただけます。
「電気工事士として独立したい」
「自分が主任電気工事士になれるか確認したい」
「建設業許可を持っているが、別途何の届出が必要か分からない」
「東京都で電気工事会社を立ち上げたい」
といった場合には、開業前に必要な許認可を整理しておくことをおすすめします。
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