旅行会社を開業するには「旅行業登録」が必要?

旅行会社を開業するには「旅行業登録」が必要です。第1種・第2種・第3種・地域限定旅行業の違い、旅行業務取扱管理者、基準資産額、営業保証金、必要書類、東京都での申請手続きや費用まで、行政書士が法律初心者にも分かりやすく解説します。
旅行会社を開業するには「旅行業登録」が必要?
「旅行会社を作ってツアーを販売したい」
「宿泊施設と観光体験をセットにして販売したい」
「地域の観光ツアーを自社で企画したい」
インバウンド需要の拡大などを背景に、このような事業を検討している方も多いのではないでしょうか。
旅行に関するビジネスは誰でも自由に始められるわけではありません。
一定の旅行業務を事業として行う場合には、旅行業法に基づく「旅行業登録」が必要です。東京都も、旅行業の営業活動を行うには一定の登録条件を備えて行政庁へ登録する必要があり、無登録で営業した場合には処分の対象になると案内しています。
一方で、旅行業には「第1種」「第2種」「第3種」「地域限定旅行業」など複数の区分があり、どの登録が必要なのか分かりにくい制度でもあります。
この記事では、東京都で旅行会社の開業を検討している方に向けて、旅行業登録の種類、登録要件、必要書類、費用、申請から営業開始までの流れを行政書士が分かりやすく解説します。
そもそも旅行業とは?
旅行業というと、一般的には旅行代理店やツアー会社をイメージするでしょう。
旅行業法上は、報酬を得て一定の旅行業務を事業として行う場合に旅行業登録が問題になります。
代表的なのは、
旅行者を募集してツアーを実施する
旅行者の依頼を受けて旅行プランを作成する
ホテルや旅館を手配する
鉄道・バスなどの交通サービスを手配する
他の旅行会社が企画した旅行商品を販売する
といった業務です。
単に「観光に関係する仕事だから旅行業登録が必要」というわけではなく、実際にどのような契約を結び、誰から報酬を受け、どこまで旅行サービスを手配するのかによって判断する必要があります。
事業を始めてから「実は旅行業登録が必要だった」と判明することがないよう、サービス設計の段階で確認しておくことが重要です。
旅行業には4つの主な登録区分がある
旅行業者の登録は、主に次の4種類に分けられます。
| 登録区分 | 主な特徴 | 登録行政庁 |
|---|---|---|
| 第1種旅行業 | 海外を含め幅広い募集型企画旅行を扱える | 観光庁長官 |
| 第2種旅行業 | 国内の募集型企画旅行を扱える | 都道府県知事 |
| 第3種旅行業 | 一定地域内の募集型企画旅行などを扱える | 都道府県知事 |
| 地域限定旅行業 | 営業所周辺の地域に限定した旅行業務 | 都道府県知事 |
業務範囲だけでなく、必要となる基準資産額や営業保証金も大きく異なります。
第1種旅行業
最も業務範囲が広いのが第1種旅行業です。
海外の募集型企画旅行を含め、原則として旅行業務を幅広く取り扱うことができます。
例えば、自社で海外パッケージツアーを企画して一般のお客様を募集するような旅行会社が代表例です。
その分、財産的要件も厳しく設定されています。
第2種旅行業
第2種旅行業では、海外の募集型企画旅行を除き、国内の募集型企画旅行などを取り扱うことができます。
例えば、
「東京発・北海道3泊4日ツアー」
「東京発・沖縄旅行」
など、国内の旅行商品を自社で企画し、不特定多数の旅行者を募集して販売する場合には第2種旅行業が候補となります。
東京都内に主たる営業所を置く第2種旅行業は、東京都知事への登録申請となります。
第3種旅行業
第3種旅行業では、海外・国内の受注型企画旅行や手配旅行などを扱うことができるほか、営業所所在地とそれに隣接する市区町村等の範囲で募集型企画旅行を実施できます。
第2種より募集型企画旅行の範囲が限定される代わりに、財産的要件は低く設定されています。
地域限定旅行業
地域限定旅行業は、地域密着型の旅行商品を提供しやすくするための制度です。
業務を行える地域は限定されますが、第2種・第3種と比較して基準資産額や営業保証金のハードルが低く設定されています。
例えば、
「墨田区周辺のまち歩きツアー」
「地域の飲食店や文化体験を組み合わせたツアー」
など、限定された地域で観光サービスを展開する事業者にとって検討しやすい区分です。
第2種・第3種・地域限定旅行業は何が違う?
東京都で新規開業する場合、特に比較することが多い3区分を整理すると次のようになります。
| 項目 | 第2種 | 第3種 | 地域限定 |
|---|---|---|---|
| 基準資産額 | 700万円以上 | 300万円以上 | 100万円以上 |
| 最低営業保証金 | 1,100万円 | 300万円 | 15万円 |
| 協会加入時の最低弁済業務保証金分担金 | 220万円 | 60万円 | 3万円 |
| 国内募集型企画旅行 | 可能 | 一定地域内 | 一定地域内 |
| 海外募集型企画旅行 | 不可 | 不可 | 不可 |
東京都の新規登録案内でも、第2種は基準資産額700万円以上、第3種は300万円以上、地域限定旅行業は100万円以上とされています。
ここで重要なのは「とりあえず一番安い地域限定を取ればよい」という考え方ではありません。
どの地域まで旅行商品を販売したいのか、募集型企画旅行を行うのか、手配だけを行うのかなど、事業計画から逆算して登録区分を決める必要があります。
旅行業登録の主な要件
旅行業登録では、単に申請書を提出すれば登録されるわけではありません。
特に重要なのが次の要件です。
旅行業務取扱管理者を置く
旅行業を行う営業所には、原則として営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。
東京都の案内では、1営業所につき1人以上を常勤専任で選任することとされ、海外旅行を取り扱う営業所では総合旅行業務取扱管理者が必要とされています。
旅行業務取扱管理者は、旅行契約の取引条件、旅行サービス提供の確実性、旅行者の安全や利便などについて管理・監督する重要な役割を担います。
「資格を持っている知人の名前だけ借りる」といった方法では要件を満たしません。
財産的基礎を満たす
旅行業では旅行者保護の観点から、一定の財産的基礎が求められます。
東京都で第2種・第3種・地域限定旅行業を申請する場合の基準資産額は、
第2種:700万円以上
第3種:300万円以上
地域限定旅行業:100万円以上
です。
注意したいのは「資本金」と「基準資産額」は同じではないということです。
基準資産額は、資産総額から繰延資産、営業権、不良債権、負債、必要な営業保証金等を差し引いて算定します。
そのため、「資本金300万円の会社だから第3種旅行業を取得できる」と単純には判断できません。
申請前に決算書等を確認して計算する必要があります。
営業保証金を準備する
旅行業者には、旅行者保護のため営業保証金制度があります。
最低額は登録区分によって異なり、第2種1,100万円、第3種300万円、地域限定15万円です。実際の額は旅行業務に関する取引額によって変動する場合があります。
ただし、旅行業協会の保証社員となった場合は、営業保証金の代わりに弁済業務保証金分担金を納付する制度があります。
最低額は、
第2種:220万円
第3種:60万円
地域限定:3万円
です。
なお、旅行業協会への加入には別途入会金や会費等が発生するため、「分担金だけ払えばよい」という意味ではありません。
欠格事由に該当しない
申請者や法人の役員等が旅行業法上の登録拒否事由に該当する場合、登録を受けることができません。
旅行業を始めるためには、財産要件だけでなく、人的要件についても事前確認が必要です。
東京都で旅行業登録する流れ
旅行業登録は、会社を作って申請書を提出すればすぐ営業できるという手続きではありません。
順番に確認していきましょう。
STEP1 どの旅行サービスを提供するか決める
まず、
誰を顧客にするのか
国内か海外か
自社でツアーを企画するのか
宿泊施設等の手配だけをするのか
どの地域で旅行を実施するのか
を整理します。
ここが曖昧だと必要な登録区分を判断できません。
STEP2 登録区分を決める
事業内容から、
第1種
第2種
第3種
地域限定旅行業
などのどれに該当するか確認します。
東京都へ申請するのは、主に第2種・第3種・地域限定旅行業です。
第1種は観光庁長官登録となるため申請先も異なります。
STEP3 旅行業務取扱管理者を確保する
営業所ごとに必要な旅行業務取扱管理者を選任します。
資格者をこれから採用する場合、採用できなければ登録計画そのものが進まなくなるため、早い段階で確認することが重要です。
STEP4 財産要件を確認する
決算書等をもとに基準資産額を計算します。
新設法人の場合と既存法人の場合では確認資料が異なることがあります。
営業保証金または旅行業協会へ加入する場合の分担金まで含めて資金計画を作りましょう。
STEP5 会社の登記内容を確認する
法人で申請する場合には、定款や履歴事項全部証明書の目的も確認します。
東京都の新規登録案内では、法人の目的に「旅行業」または「旅行業法に基づく旅行業」を入れるよう案内されています。
目的が入っていなければ、申請前に目的変更登記が必要になることがあります。
STEP6 必要書類を作成する
旅行業登録では、申請書だけでなく多数の書類を準備します。
東京都が公開している様式には、
登録申請書
旅行業務に係る事業の計画
旅行業務に係る組織の概要
旅行業務取扱管理者選任一覧表
宣誓書
履歴書
事故処理体制の説明書
旅行業約款関係書類
などがあります。
法人・個人、新規法人・既存法人などによって必要書類は異なります。
STEP7 東京都へ申請する
東京都内に主たる営業所を置く第2種・第3種・地域限定旅行業の場合、東京都へ登録申請を行います。
審査では書類だけでなく営業所について確認される場合もあります。
東京都の案内では、申請から登録までの標準処理期間は30~40日とされています。ただし、受付状況によってこの期間を超える場合があります。
STEP8 登録後に保証金等の手続きを行う
ここは特に注意が必要です。
登録通知を受けた瞬間から営業できるわけではありません。
東京都の案内では、登録通知を受けた日から14日以内に、
旅行業協会へ加入しない場合は営業保証金を供託して届出
旅行業協会へ加入する場合は弁済業務保証金分担金を納付して届出
を行う必要があります。
必要な手続きが完了してから営業を開始します。
旅行業登録に必要な費用は?
東京都の第2種・第3種・地域限定旅行業の新規登録では、登録手数料として9万円が案内されています。
ただし、実際の開業費用は登録手数料だけではありません。
営業保証金または旅行業協会への分担金
旅行業協会へ加入する場合の入会金・会費等
法人設立や目的変更が必要な場合の費用
営業所の賃料
旅行業務取扱管理者の人件費
行政書士へ依頼する場合の報酬
なども考える必要があります。
特に第2種旅行業では財産的要件や保証金が大きいため、事業計画の初期段階で必要資金を確認しておきましょう。
旅行業登録の有効期間は5年間
旅行業登録は一度取得すれば永久に有効というものではありません。
登録の有効期間は登録日から5年間です。
引き続き旅行業を営む場合には更新登録が必要となります。
また、登録事項に変更が生じた場合には、変更登録や変更届が必要になる場合があります。
会社名を変更した
代表者が変わった
営業所を移転した
旅行業務取扱管理者が変わった
などの場合は、必要な手続きを確認しましょう。
旅行業登録と旅行サービス手配業は何が違う?
混同されやすいのが「旅行サービス手配業」です。
旅行サービス手配業は、いわゆるランドオペレーターなどが、旅行業者等から依頼を受けて宿泊施設や運送サービスなどを手配する事業です。
旅行者に直接ツアーを販売する一般的な旅行会社とは制度が異なります。
東京都でも「旅行業・旅行業代理業」と「旅行サービス手配業」で申請様式を分けています。
インバウンド関連事業では、
「海外の旅行会社から依頼を受けて、日本国内のホテルやバスを手配する」
といったビジネスも多いため、自社に必要なのが旅行業登録なのか旅行サービス手配業登録なのかを最初に整理することが重要です。
実例|墨田区でまち歩きツアーを販売したい場合
例えば、墨田区で観光事業を行うA社が、
「東京スカイツリー周辺や両国などを巡る地域密着型ツアーを企画して一般客へ販売したい」
と考えたとします。
この場合、まずツアーの内容を確認します。
旅行者との契約内容や宿泊・運送等の手配内容によって旅行業への該当性を検討し、旅行業に該当する場合には業務範囲に適した登録区分を選びます。
営業エリアが限定されている場合には、地域限定旅行業を検討できる可能性があります。
しかし、将来的に、
北海道ツアーも販売したい
全国の旅行商品を自社企画したい
海外旅行も扱いたい
という計画があるなら、現在の事業だけでなく将来の展開まで考えて登録区分を決める必要があります。
最初の登録費用だけを見て選ぶと、事業拡大時に登録区分の変更が必要になることがあります。
旅行会社開業前チェックリスト
- 自社のサービスが旅行業に該当するか確認した
- 募集型・受注型・手配旅行の違いを確認した
- 第1種・第2種・第3種・地域限定のどれが必要か確認した
- 営業所を確保した
- 旅行業務取扱管理者を確保した
- 海外旅行を扱うか決めた
- 基準資産額を計算した
- 営業保証金または旅行業協会への加入費用を確認した
- 法人の定款・登記目的を確認した
- 必要書類を確認した
- 旅行業約款を準備した
- 登録完了までの期間を事業計画に入れた
- 登録後の保証金等の手続きを確認した
- 営業開始前に必要な掲示等を確認した
一つでも判断できない項目がある場合には、物件契約や大きな投資をする前に確認することをおすすめします。
旅行業登録でよくある失敗
登録区分を間違える
「小さな会社だから第3種」という決め方はできません。
会社の規模ではなく、実際に取り扱う旅行業務の範囲によって必要な登録を判断します。
資本金だけで財産要件を判断する
基準資産額と資本金は別物です。
負債や営業保証金等も考慮して計算するため、決算内容によっては資本金が一定額あっても要件を満たさない可能性があります。
旅行業務取扱管理者を後から探す
登録には管理者の選任が必要です。
申請直前になってから資格者を探すと、開業スケジュールが大きく遅れる可能性があります。
登録通知後すぐ営業してしまう
登録後にも営業保証金の供託または弁済業務保証金分担金の納付・届出などが必要です。
東京都の案内でも「申請をもって旅行業を営むことはできない」と明記されています。
営業開始可能な時点を正確に確認しましょう。
旅行業登録は行政書士に依頼できる?
旅行業登録は行政書士へ相談できる許認可業務の一つです。
旅行業は、単に申請書を書くだけではなく、
事業内容の整理
必要な登録区分の確認
財産要件の確認
必要書類の整理
申請書・事業計画等の作成
行政庁との事前確認
など、申請前の準備が重要になります。
特に新規事業の場合、「自分たちがやろうとしているサービスには何の登録が必要なのか」という段階から整理することが大切です。
富森行政書士事務所では、許認可申請をはじめ各種行政手続き・書類作成をサポートしています。
既存の取扱業務については、富森行政書士事務所のサービスページもご確認ください。
旅行業登録に関するQ&A
Q1 小規模な旅行会社でも登録は必要ですか?
会社の規模だけで決まるものではありません。
個人事業や小規模法人でも、報酬を得て旅行業法上の旅行業務を事業として行う場合には登録が必要となる可能性があります。
Q2 自分で旅行プランを作るだけなら登録が必要ですか?
旅行プランを紹介するだけなのか、旅行者と契約して宿泊・交通等を手配するのかによって異なります。
具体的な契約関係と業務内容から判断する必要があります。
Q3 第3種と地域限定旅行業はどちらがよいですか?
営業エリアや将来的な事業展開によります。
地域限定旅行業は財産的要件が低い一方、取り扱える旅行業務の地域が限定されています。
地域外へ事業を広げる予定がある場合には、第3種など他の区分も含めて検討する必要があります。
Q4 旅行業務取扱管理者は社長が兼任できますか?
資格その他の要件を満たしていれば、代表者自身を旅行業務取扱管理者として選任できる場合があります。
ただし、営業所における勤務実態なども含めて要件を確認する必要があります。
Q5 旅行業務取扱管理者の資格がなくても会社を作れますか?
会社そのものを設立することと、旅行業登録を受けて旅行業を営業することは別です。
会社設立は可能でも、必要な管理者を選任できなければ旅行業登録を受けることができません。
Q6 自宅を営業所にできますか?
物件の状況や実際の営業体制などを確認する必要があります。
賃貸物件の場合には、旅行業の営業所として利用できるか賃貸借契約や所有者の承諾についても事前に確認しておくと安心です。
Q7 登録にはどれくらい時間がかかりますか?
東京都の案内では、申請から登録までの標準処理期間は30~40日です。ただし、受付状況によって長くなることがあります。さらに登録後、保証金等に関する手続きが必要です。
Q8 旅行業登録にはいくら必要ですか?
東京都の第2種・第3種・地域限定旅行業の新規登録手数料は9万円です。これとは別に営業保証金または旅行業協会へ加入する場合の弁済業務保証金分担金等が必要になります。
まとめ|旅行会社を始めるなら事業計画の段階で登録区分を確認しましょう
旅行会社を開業する場合、旅行業法上の「旅行業」に該当する事業を行うには旅行業登録が必要です。
特に重要なのは、
どのような旅行商品を扱うのか
どの地域で営業するのか
旅行業務取扱管理者を確保できるか
基準資産額を満たしているか
営業保証金等を準備できるか
という点です。
第2種、第3種、地域限定旅行業では、扱える旅行商品の範囲だけでなく必要な資産や保証金も大きく異なります。
そのため、「とりあえず会社を作ってから考える」のではなく、事業計画の段階から必要な許認可を確認することが重要です。
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