「山林を相続・購入したら届出が必要?」森林の土地の所有者届出制度を行政書士が分かりやすく解説

山林や森林を相続・購入したら届出が必要?森林の土地の所有者届出制度について、対象となる土地、90日以内の期限、必要書類、相続登記との違いを行政書士が分かりやすく解説。2026年4月から追加された国籍等の記載についても紹介します。
「山林を相続・購入したら届出が必要?」森林の土地の所有者届出制度を行政書士が分かりやすく解説
「親が持っていた山林を相続した」
「地方の森林を購入した」
「土地を買ったら、一部が森林だった」
このような場合、相続登記や所有権移転登記だけ済ませれば手続きは終わりだと思っていないでしょうか。
実は、一定の森林の土地について新たに所有者となった場合、森林法に基づき、その土地が所在する市町村へ「森林の土地の所有者届出」を行う必要があります。
しかも、対象となるのは大規模な山林だけではありません。
面積にかかわらず、売買、相続、贈与、法人の合併などによって対象となる森林の土地を取得した場合には、原則として所有者となった日から90日以内の届出が必要です。
さらに2026年4月1日から届出書の様式が改正され、新たに所有者となった方の「国籍等」などを記載することになりました。
相続によって山林を取得した場合には、相続登記とは別に森林法上の届出が必要になる可能性があります。
この記事では、森林の土地の所有者届出制度について、対象者、対象となる土地、90日という期限、必要書類、相続時の注意点、2026年の制度変更まで分かりやすく解説します。
森林の土地の所有者届出制度とは?
森林の土地の所有者届出制度は、森林法に基づき、新たに森林の土地の所有者となった人の情報を市町村が把握するための制度です。
2012年4月から開始されています。
森林の所有者が分からない状態になると、行政が森林整備について所有者へ働きかけたり、林業事業者が間伐などを行うために所有者と調整したりすることが難しくなります。
そこで、売買だけでなく相続などによる所有者変更についても市町村が把握できるよう、届出制度が設けられています。
不動産登記とは目的が異なる制度であるため、「法務局で名義変更したから森林関係の手続きも完了」というわけではありません。
2026年4月から何が変わった?
2026年4月1日から、森林の土地の所有者届出書の様式が改正されました。
大きな変更点は、所有者となった方の国籍等の記載が追加されたことです。
個人の場合は国籍等を記載します。
法人の場合には、代表者の国籍等に加え、一定の場合には役員や議決権に関する国名等についても記載します。
また、届出人が国外に居住している場合には、国内の連絡先を別紙で提出する取扱いも追加されています。
2026年4月以降に森林の土地を取得した方は、古い届出書をそのまま使用しないよう注意しましょう。
どんな場合に届出が必要?
森林の土地を新しく取得した場合が対象です。
代表的な取得原因には、
・売買
・相続
・贈与
・遺贈
・土地の交換
・譲渡担保
・法人の合併
・法人の分割
などがあります。
重要なのは「どのような理由で取得したか」だけではありません。
森林法の対象となる土地の所有権を新たに取得したかどうかで判断します。
個人・法人を問わず対象となり、取得した森林の面積にも下限はありません。
小さな山林でも届出が必要?
必要になる可能性があります。
森林の土地の所有者届出には、「100平方メートル以上」「1ヘクタール以上」といった面積要件はありません。
例えば、相続財産の中に非常に小さな山林が含まれていた場合でも、その土地が制度の対象となる森林であれば届出が必要になります。
「少ししかないから大丈夫」と自己判断しないことが重要です。
どんな森林が対象になる?
すべての木が生えている土地が自動的に対象になるわけではありません。
届出の対象となるのは、都道府県が策定する「地域森林計画」の対象となっている森林です。
ここで注意したいのが、登記簿上の地目だけで判断できないことです。
林野庁は、登記上の地目にかかわらず、取得した土地が森林の状態となっている場合には届出対象となる可能性が高いと案内しています。
つまり、
「登記簿では山林だから必ず対象」
「登記簿では雑種地だから対象外」
と単純には判断できません。
取得した土地が地域森林計画対象森林に含まれているか分からない場合は、その土地が所在する都道府県または市町村の林務担当部署へ確認します。
誰が届出をする?
届出をするのは、新しく森林の土地の所有者となった人です。
例えば売買の場合には、原則として購入して新所有者となった人が届出人になります。
相続の場合には、森林を相続した相続人が対象になります。
法人が森林を購入した場合には法人が届出人となります。
個人だけの制度ではないため、不動産会社、林業会社、投資会社などが森林を取得した場合にも確認が必要です。
相続した場合は特に注意
森林の土地の所有者届出で特に注意したいのが相続です。
「遺産分割協議が終わっていないから、誰が山林を相続するかまだ決まっていない」
というケースもあります。
林野庁の2026年版パンフレットでは、遺産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に法定相続人の共有物として届出を行う必要があると案内されています。
遺産分割協議が終わるまで何か月も待ってから届出をする、という考え方には注意が必要です。
相続財産に山林が含まれていることが分かったら、早い段階で対象森林かどうかを確認しましょう。
相続登記とは別の手続き
森林の土地の所有者届出と相続登記は別制度です。
| 項目 | 森林の土地の所有者届出 | 相続登記 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 森林法 | 不動産登記法 |
| 主な提出先 | 土地所在地の市町村 | 法務局 |
| 主な目的 | 森林所有者の把握 | 不動産の権利関係を登記 |
| 主な期限 | 所有者となった日から90日以内 | 原則として取得を知った日から3年以内 |
| 一方を行えば他方も完了するか | しない | しない |
2024年4月1日から相続登記が義務化されていますが、相続登記を行ったからといって森林法上の届出が不要になるわけではありません。
林野庁も、森林の土地の所有者届出制度は不動産登記とは別制度であり、不動産登記の実施の有無にかかわらず届出が必要と明記しています。
相続については戸籍収集、相続人調査、遺産分割協議書など複数の手続きが発生します。
富森行政書士事務所では相続手続きに関するサポートも行っていますので、山林を含む相続財産を整理する際には、他の相続手続きとあわせて確認すると効率的です。
届出期限は90日以内
届出期限は、森林の土地の所有者となった日から90日以内です。
例えば売買によって森林を取得した場合には、契約書を作成した日だけを見て判断するのではなく、実際の所有権移転日を確認する必要があります。
相続の場合も90日という比較的短い期限があるため注意が必要です。
相続では、
死亡届
戸籍収集
財産調査
遺産分割協議
相続登記
預貯金の解約
など多くの手続きが同時進行します。
その中で山林の届出を見落としやすいため、財産調査の段階で山林の有無を確認することが大切です。
届出先はどこ?
届出先は、取得した森林の土地が所在する市町村の長です。
自分の住所地の市役所ではありません。
例えば東京都在住の人が長野県内の森林を相続した場合には、森林所在地の市町村へ届出を行います。
複数の市町村に森林を所有している場合には、それぞれの所在地を確認する必要があります。
提出方法については自治体によって取扱いが異なる場合があるため、提出前に森林所在地の市町村へ確認しましょう。
届出書には何を書く?
2026年4月以降の届出書では、主に次の内容を記載します。
・所有権移転年月日
・所有権移転の原因
・前所有者の氏名または名称
・前所有者の住所
・新所有者の氏名または名称
・新所有者の住所
・連絡先
・国籍等
・森林の土地の所在
・土地の面積
・土地の用途
法人の場合には代表者等についての記載も必要になります。
国外居住者については国内連絡先に関する書類も確認しましょう。
必要な添付書類
林野庁は、届出書のほかに主に次の書類を案内しています。
・登記事項証明書の写し
または
・土地売買契約書など権利を取得したことが分かる書類の写し
さらに、
・土地の位置を示す図面
が必要です。
相続の場合には、相続によって森林の土地を取得したことを確認できる資料を整理します。
自治体によって具体的な提出方法や確認書類の取扱いが異なる場合があるため、実際の提出先へ確認してから準備するとスムーズです。
STEP1 相続・購入した土地を確認する
まず取得した不動産を一覧にします。
固定資産税関係資料、登記事項証明書、売買契約書などを確認し、山林や森林と思われる土地が含まれていないか調べます。
相続の場合には、被相続人が遠方に山林を所有しているケースもあるため注意しましょう。
STEP2 地域森林計画対象森林か確認する
次に、取得した土地が地域森林計画対象森林に該当するか確認します。
地目だけで自己判断せず、必要に応じて森林所在地の市町村または都道府県の担当部署へ問い合わせます。
STEP3 取得日を確認する
90日の期限を計算するため、所有者となった日を確認します。
売買、相続、贈与など、取得原因によって確認する資料が異なります。
特に相続では、遺産分割協議が終わるまで放置しないよう注意しましょう。
STEP4 届出書を作成する
林野庁や自治体が公開している最新様式を使用して届出書を作成します。
2026年4月1日から様式が変更されているため、以前ダウンロードした古い様式を使用しないようにします。
林野庁はExcel形式の作成支援ファイルも公開しています。
STEP5 添付書類を準備する
権利取得を確認できる資料と土地の位置を示す図面などを準備します。
届出書に記載した土地の所在、面積、取得日などが添付資料と一致しているか確認します。
STEP6 森林所在地の市町村へ提出する
所有者となった日から90日以内に提出します。
提出方法については自治体ごとに確認します。
提出後も森林を伐採したり開発したりする場合には、別の手続きが必要になることがあります。
森林を取得したら自由に伐採できる?
森林を所有したからといって、何でも自由にできるとは限りません。
森林の土地の所有者届出は、あくまで「所有者になったこと」を届け出る制度です。
森林を伐採する場合には「伐採及び伐採後の造林の届出」など別の手続きが問題になることがあります。
さらに林野庁によると、地域森林計画対象民有林で1ヘクタールを超える林地開発を行う場合には原則として都道府県知事の許可が必要で、太陽光発電設備の設置を目的とする場合は0.5ヘクタールを超える開発が許可制度の対象となります。
森林を購入して、
「キャンプ場にしたい」
「太陽光発電設備を設置したい」
「建物を建てたい」
「大規模に造成したい」
という場合には、土地取得時の届出とは別に、計画段階で必要な許認可を確認しましょう。
国土利用計画法の届出をした場合は?
一定規模以上の土地取引では、国土利用計画法に基づく届出が必要になることがあります。
森林の土地について国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している場合には、森林法上の森林の土地の所有者届出は不要です。
ただし、国土利用計画法の届出は一定面積以上の土地取引が対象となる制度であり、森林所有者届出とは対象や期限などが異なります。
「どちらか分からないから何もしない」のではなく、土地の所在地、面積、取得方法などから必要な手続きを確認しましょう。
森林取得時のチェックリスト
□ 相続・売買した土地の一覧を確認した
□ 山林や森林が含まれていないか確認した
□ 地域森林計画対象森林か確認した
□ 所有者となった日を確認した
□ 90日の期限を確認した
□ 最新の届出様式を使用している
□ 2026年4月追加の国籍等を記載した
□ 権利取得を証明する資料を準備した
□ 土地の位置を示す図面を準備した
□ 国土利用計画法の届出対象か確認した
□ 相続登記とは別の手続きだと理解した
□ 今後伐採・造成する場合の手続きも確認した
実例1 親から山林を相続した
父親が亡くなり、相続財産を調査したところ、地方に山林があることが分かったケースです。
相続人は「価値がほとんどない山だから特に手続きはいらない」と考えていました。
しかし、その山林が地域森林計画対象森林であれば、面積や資産価値にかかわらず森林の土地の所有者届出が必要になる可能性があります。
さらに相続登記も別途確認する必要があります。
「価値が低い土地=手続き不要」ではない点に注意しましょう。
実例2 キャンプ用に小さな森林を購入した
個人が趣味のキャンプやアウトドアのために小規模な森林を購入したケースです。
面積が小さくても、地域森林計画対象森林であれば届出対象となります。
また、土地を取得した後に森林を伐採したり施設を設置したりする場合には、別の規制についても確認が必要です。
購入前の段階で「取得後に何をする予定なのか」まで整理しておくと安心です。
実例3 遺産分割協議が終わらない
父親が亡くなり、山林を含む遺産について兄弟間で遺産分割協議をしているものの、90日以内に結論が出そうにないケースです。
この場合、「誰が相続するか決まるまで何もしなくてよい」とは限りません。
林野庁は、遺産分割前でも相続開始の日から90日以内に法定相続人の共有物として届出が必要と案内しています。
相続手続きと森林法上の期限を分けて管理する必要があります。
Q&A
Q1 山林を相続したら必ず届出が必要ですか?
すべての山林が対象とは限りません。
取得した土地が地域森林計画の対象森林に該当するか確認します。
該当する場合には、原則として所有者となった日から90日以内の届出が必要です。
Q2 面積が100平方メートルしかなくても必要ですか?
対象森林であれば、面積の大小にかかわらず届出が必要です。
Q3 相続登記をしたので届出は不要ですか?
不要にはなりません。
相続登記と森林の土地の所有者届出は別制度です。
Q4 遺産分割協議が終わっていません
林野庁は、遺産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に法定相続人の共有物として届出する必要があると案内しています。
Q5 2026年から外国人だけ手続きが必要になったのですか?
違います。
森林の土地の所有者届出自体は以前からあり、日本人・外国人、個人・法人を問わず対象となります。
2026年4月から変更されたのは届出書の様式で、新たに国籍等の記載が追加されました。
Q6 届出をすれば森林を開発できますか?
できるとは限りません。
森林所有者届出は所有者情報を届け出る制度です。
伐採、造成、太陽光発電設備の設置などを行う場合には、別途許可や届出が必要になることがあります。
Q7 行政書士に相談できますか?
森林の土地の所有者届出など、行政機関へ提出する書類の作成・提出手続きは、行政書士が取り扱うことのできる分野です。
また、相続で森林を取得した場合には、戸籍収集、相続人調査、遺産分割協議書の作成など他の相続手続きと一緒に整理することで、手続き漏れを防ぎやすくなります。
登記申請については司法書士の業務となるため、必要に応じて専門家を使い分けることが重要です。
山林を取得したら「登記だけ」で終わらせないことが重要
森林の土地を相続したり購入したりした場合、最初に確認したいのが、その土地が地域森林計画対象森林に該当するかどうかです。
対象となる森林であれば、原則として所有者となった日から90日以内に森林所在地の市町村へ届出を行います。
特に相続では、相続登記、戸籍収集、遺産分割、預貯金手続きなどに意識が向き、森林法上の届出を見落としてしまう可能性があります。
また、2026年4月1日から届出様式が改正され、国籍等の記載が新たに必要になりました。現在手続きを行う場合は最新様式を確認しましょう。
森林を取得した後に伐採や造成、太陽光発電設備の設置などを予定している場合には、所有者届出だけでなく別の許認可が必要になる可能性もあります。
富森行政書士事務所では、相続手続きや各種許認可・届出についてサポートしています。
「相続財産の中に山林が見つかった」「森林を購入したが必要な手続きが分からない」「90日の届出期限が迫っている」という場合は、早めに必要な手続きを確認することをおすすめします。
