『認知症対策として家族信託が注目』相続、任意後見・成年後見の違いについて分かりやすく解説


家族信託とは?

「親が高齢になってきたけれど、将来お金や家のことは大丈夫だろうか」
「認知症になったら、家族は何もできなくなるの?」

このような不安を感じている方はとても多いです。
そこで知っておきたいのが家族信託という考え方です。


目次

家族信託を一言でいうと

家族信託とは、
元気なうちに、自分の財産の管理を信頼できる家族に任せておく仕組みです。

将来、

  • 認知症になったとき
  • 判断が難しくなったとき

に備えて、

「誰に」「何を」「どう使ってもらうか」を
あらかじめ約束(契約)しておく制度です。


なぜ家族信託が必要なのか

認知症になると、家族でも財産を動かせない

意外に知られていませんが、認知症になると次のことができなくなります。

  • 銀行の預金を下ろす
  • 家や土地を売る
  • 賃貸や修繕の契約をする

たとえ配偶者や子どもでも、
本人の代わりに勝手に契約することはできません


【実例①】家を売れずに困ったケース

80代のAさんは、自宅で一人暮らし。
将来、施設に入る場合は自宅を売却し、その費用に充てる予定でした。

ところが、認知症を発症。
自宅の売却手続きが一切できなくなってしまいました。

結果として、家庭裁判所に申し立てて成年後見制度を利用することに。

  • 手続きに時間がかかる
  • 裁判所への定期報告が必要
  • 売却にも制限がある

と、家族の負担は大きくなりました。

家族信託をしていればどうなったか

Aさんが元気なうちに、

「自宅の管理や売却は長男に任せる」
という家族信託をしていれば、

認知症になった後でも、長男が自宅を売却できたのです。


【実例②】アパート経営を続けたいケース

70代のBさんは、アパート経営をしていました。
認知症になっても、家賃収入を生活費として使い続けたいと考えていました。

そこで、長女を管理役とする家族信託を設定。

  • 家賃の受け取り
  • 修繕の判断
  • 入居者対応

を長女に任せました。

その結果、
Bさんが認知症になった後も、アパート経営は問題なく継続できています。


遺言との違い

ここでよくある疑問です。

「遺言を書いておけば安心では?」

遺言とは

  • 効力が出るのは亡くなった後
  • 財産の分け方を決めるもの

家族信託との違い

  • 遺言:生前の認知症対策にはならない
  • 家族信託:生きている間から使える

つまり、
遺言は相続対策、家族信託は認知症対策
という役割の違いがあります。


任意後見との違い

任意後見とは

  • 元気なうちに契約する
  • 認知症になった後に効力が出る
  • 家庭裁判所が後見監督人を選任

家族信託との違い

  • 任意後見:裁判所の関与がある
  • 家族信託:裁判所の関与がない

また、任意後見は本人保護が最優先のため、
不動産売却などがスムーズに進まない場合もあります。


成年後見との違い

成年後見とは

  • 認知症になってから利用する制度
  • 家庭裁判所が後見人を選ぶ
  • 本人の財産を厳格に守る仕組み

デメリット

  • 原則として途中でやめられない
  • 自由な財産運用はできない
  • 家族の思い通りに動かせないことがある

家族信託との違い

  • 成年後見:事後的・厳格
  • 家族信託:事前に準備・柔軟

どの制度を選べばよいのか

簡単にまとめると次のとおりです。

  • 認知症になる前から備えたい
     → 家族信託
  • 亡くなった後の相続だけ決めたい
     → 遺言
  • 生活や医療の世話まで任せたい
     → 任意後見
  • すでに認知症が進んでいる
     → 成年後見

実務では、
家族信託+遺言を組み合わせるケースも多くあります。


まとめ

家族信託は、
「元気なうちに、将来の財産管理を家族に託す」
ための制度です。

  • 遺言:亡くなった後の話
  • 任意後見・成年後見:認知症になった後の話
  • 家族信託:今からできる準備

将来、家族が困らないためにも、
早めに知っておくことが大切です。


ご相談をご検討の方へ

家族信託は、ご家庭ごとに最適な形が異なります。
「うちは必要なのか」「何から始めればよいのか」
そうした疑問をお持ちの段階でも構いません。

初回相談では、制度の説明から丁寧に行っております。
どうぞお気軽にご相談ください。


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この記事を書いた人

東京都行政書士会墨田支部所属の富森翔太です。
相続、許認可、会社設立等の業務を行なっています。
行政や法律に関する疑問や手続きについてわかりやすく発信していきます。

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