飲食店営業許可の図面は何を書く?平面図の作り方・必要設備・注意点を行政書士が解説

飲食店営業許可を申請するときに必要になるのが、店舗の構造や設備を示す図面です。
「不動産会社からもらった間取り図をそのまま出せばいい?」
「厨房機器はどこまで書けばいい?」
「手書きでも大丈夫?」
「まだ内装工事中だけど図面を作っていい?」
飲食店を初めて開業する方からすると、どこまで詳しく作成すればよいのか分かりにくい書類の一つです。
飲食店営業許可では、申請書の内容だけでなく、実際の店舗が食品衛生法に基づく施設基準を満たしているか保健所が確認します。
そのため、図面は単なる「店舗の間取り図」ではありません。
厨房、客席、手洗い設備、シンク、冷蔵設備、食器類の保管設備など、営業許可に必要な設備の配置を確認するための重要な資料です。
この記事では、東京都で飲食店営業許可を取得する場合を中心に、営業許可申請で使用する図面には何を書けばよいのか、図面作成から保健所への事前相談までの流れを行政書士が分かりやすく解説します。
飲食店営業許可ではなぜ図面が必要?
飲食店営業許可を取得するためには、店舗が定められた施設基準を満たしていなければなりません。
保健所は申請時の図面と施設検査によって、
- 厨房がどこにあるか
- 客席と厨房がどのように区画されているか
- 手洗い設備がどこにあるか
- 洗浄設備がどこにあるか
- 冷蔵・冷凍設備があるか
- 食品や食器を衛生的に保管できるか
- 給排水設備に問題がないか
などを確認します。
つまり、図面は「このような店舗で営業します」と保健所へ説明するための資料です。
見た目がきれいな図面を作ることよりも、実際の店舗の構造と必要な設備が正確に記載されていることが重要です。
不動産会社の間取り図をそのまま使える?
物件契約時にもらった間取り図や、不動産会社の募集図面だけでは不十分な場合があります。
一般的な不動産図面には、
- 厨房設備
- 手洗い設備
- シンク
- 冷蔵庫
- 食器棚
- 給湯設備
など、営業許可の審査に必要な設備まで記載されていないことが多いためです。
また、実際の店舗を測ってみると、募集図面と寸法や壁の位置が異なっていることもあります。
不動産図面は店舗図面を作る際の参考資料として利用できますが、営業許可用として使用する場合は、現況を確認したうえで必要な設備を書き加えることが重要です。
飲食店営業許可の図面に記載する主な内容
店舗によって必要な記載内容は異なりますが、一般的には次のような内容を図面へ反映します。
店舗全体の形状
まず、営業所全体の形を記載します。
壁、柱、出入口など、店舗の基本的な構造が分かるようにします。
店舗のどこからどこまでを営業施設として使用するのかが分かることが重要です。
厨房
食品を調理する厨房の位置を明確にします。
客席と厨房の境界も確認できるようにします。
飲食店営業許可では、厨房が衛生的に管理できる構造になっていることが重要です。
客席
客席がある店舗では、厨房との位置関係が分かるように記載します。
テーブルやカウンターなどの配置も、店舗の使用状況を把握するための参考になります。
出入口
店舗の出入口や厨房への出入口などを記載します。
扉がある場合には、その位置も図面上で確認できるようにしておくと分かりやすくなります。
トイレ
トイレの位置も記載します。
トイレと厨房の位置関係、手洗い設備などを確認できるようにします。
厨房設備はどこまで図面に書く?
飲食店営業許可では、厨房内の設備が特に重要です。
店舗によって異なりますが、主に次のような設備を記載します。
- シンク
- 従業者用手洗い設備
- 冷蔵庫
- 冷凍庫
- 調理台
- コンロ
- 食器棚・保管設備
- 給湯設備
- その他営業に使用する主要な設備
図面を見たときに、
「どこで洗うのか」
「どこで手を洗うのか」
「どこで食品を保管するのか」
「どこで調理するのか」
が分かるようにしておくことがポイントです。
手洗い設備は特に注意
現在の飲食店営業許可では、従業者が使用する手洗い設備について、洗浄後の手指が再び汚染されにくい構造の水栓が求められます。
例えば、
- センサー式
- 足踏み式
- 肘などで操作できるレバー式
など、手指の再汚染を防止できる構造があります。
どの設備で基準を満たすかは、設置予定の設備や管轄保健所の確認を受けて判断します。
図面上でも、従業者用の手洗い設備がどこに設置されるのか分かるようにしておきます。
シンクは「必ず2槽」と決まっている?
飲食店営業許可について、
「シンクは絶対に2槽必要」
と聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、必要な洗浄設備は営業内容や施設の状況などを踏まえて判断する必要があります。
インターネット上の古い情報だけを見て、
「飲食店だから必ずこの設備」
と決めつけるのは避けたほうがよいでしょう。
提供する料理、調理工程、使用する器具などを整理して、工事前に管轄保健所へ確認することが重要です。
冷蔵庫や食器棚も図面に記載する
冷蔵・冷凍が必要な食品を取り扱う場合には、適切な設備が必要です。
また、洗浄した食器や調理器具を衛生的に保管できる設備も必要になります。
そのため、図面には、
「冷」
「冷蔵庫」
「食器棚」
など、何の設備なのか分かるように記載します。
単なる四角形だけを描くと何の設備なのか判断できないため、設備名を併記すると分かりやすくなります。
寸法は書いた方がいい?
店舗の形状や設備配置を正確に伝えるため、主要部分の寸法を記載しておくと確認しやすくなります。
特に、
- 営業所全体
- 厨房
- 出入口
- 通路
- 設備の配置
などについて、現地測量をもとに作成すると実際の店舗との食い違いを防ぎやすくなります。
ただし、飲食店営業許可の図面は建築確認申請の設計図と同じものではありません。
必要以上に複雑な建築図面を作ることが目的ではなく、保健所が店舗の構造・設備を確認できることが重要です。
図面に面積は必要?
申請時には営業施設の規模や構造を確認できるようにしておく必要があります。
店舗の形が単純な長方形であれば、
縦 × 横
で比較的簡単に求められます。
一方、
- 柱が出ている
- 壁が斜めになっている
- 店舗がL字型になっている
- 厨房だけ形状が複雑
といった店舗では、いくつかの図形に分けて面積を計算する方法があります。
現地の形状を正確に測ったうえで図面へ反映することが重要です。
手書きの図面でも申請できる?
CADで作成された図面でなければ申請できない、というわけではありません。
必要な情報が正確に記載され、保健所が店舗の構造や設備を確認できる図面であれば、必ずしもCADである必要はありません。
ただし、実際の店舗では、
- 壁が斜めになっている
- 柱がある
- カウンターが特殊な形状
- 厨房設備が多い
- 店舗面積を正確に把握したい
といったケースがあります。
このような場合は、CADで作成すると寸法や設備配置を整理しやすくなります。
また、営業許可以外の届出でも同じ店舗図面を基礎資料として使用する場合、正確な図面を作っておくと後の手続きが進めやすくなります。
CADで作るメリット
CADを使用する最大のメリットは、店舗の寸法や設備配置を正確に管理しやすいことです。
例えば、現地測量した寸法をもとに、
- 外周を作図
- 壁や柱を作図
- 厨房・客席を区分
- シンクや手洗い設備を配置
- 冷蔵庫や食器棚を配置
- 寸法を記入
- 必要な名称を記入
という順番で整理できます。
内装工事によって設備位置が変わった場合も、該当部分を修正しやすいのがメリットです。
図面は工事前に作る?完成後に作る?
理想的なのは、工事前と完成前後の両方で確認することです。
工事前
内装業者の設計図などをもとに営業許可用の設備配置を確認し、保健所へ事前相談します。
この段階で施設基準上の問題を確認できれば、工事完成後のやり直しを防ぎやすくなります。
工事後
実際に完成した店舗が事前相談時の図面どおりになっているか確認します。
設備の位置が変更されていれば、必要に応じて図面も修正します。
つまり、
設計図を作る
↓
保健所へ事前相談
↓
内装工事
↓
完成店舗を確認
↓
必要に応じて図面修正
↓
施設検査
という流れが安全です。
図面と実際の店舗が違うとどうなる?
図面上では手洗い設備があるのに、実際の店舗には設置されていない。
図面では厨房と客席が区画されているのに、完成後の店舗では構造が変わっている。
このような状態では、施設検査の際に確認が必要になります。
場合によっては、
- 図面の修正
- 設備の追加
- 内装の修正
- 再確認
などが必要になり、開業予定日へ影響する可能性があります。
申請用の図面だけを整えるのではなく、図面と現況を一致させることが重要です。
居抜き物件でも測量した方がいい?
居抜き物件の場合でも、実際の店舗を確認することをおすすめします。
前の営業者が使用していた図面が残っていても、
- 設備が撤去されている
- 厨房機器が入れ替わっている
- 間仕切りが変更されている
- 手洗い設備が古い
- 図面と実際の寸法が違う
といったことがあります。
「以前も飲食店だったから大丈夫」と判断せず、現在の店舗が施設基準を満たしているか確認します。
保健所への事前相談には図面を持っていく
飲食店を新しく開業する場合は、内装工事を始める前に管轄保健所へ相談することをおすすめします。
事前相談では、予定している営業内容と店舗図面を見ながら確認するとスムーズです。
少なくとも、
- 店舗全体
- 厨房
- 客席
- トイレ
- 手洗い
- シンク
- 冷蔵設備
- 保管設備
などが分かる図面を準備しておくとよいでしょう。
設備の商品仕様が分かる資料があれば、必要に応じて一緒に確認できます。
保健所に相談してから工事した方がいい理由
例えば、工事完成後に、
「この手洗い設備では基準を満たさない」
「この場所に必要な設備がない」
「厨房の構造を変更する必要がある」
と分かれば、追加工事が必要になる可能性があります。
設備を追加するだけなら比較的簡単な場合もありますが、給排水管や壁を変更するとなれば工事費用も大きくなります。
そのため、
物件確認
↓
図面作成
↓
保健所への事前相談
↓
内装工事
という順番を意識することが重要です。
深夜営業するバーは警察用の図面も必要になることがある
深夜0時以降に酒類を中心として提供するバーなどでは、飲食店営業許可とは別に、警察署への深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要になる場合があります。
この場合、保健所用の図面とは別に、警察署への届出で営業所の平面図などが必要になります。
同じ店舗を対象にした図面でも、保健所と警察署では確認する目的が異なります。
保健所では食品衛生上の施設基準が中心ですが、警察関係の手続きでは営業所の構造、客室、照明設備、音響設備など別の事項を確認します。
そのため、
「保健所へ出した図面をそのまま警察署へ出せばよい」
とは限りません。
最初に正確な店舗平面図を作成しておき、その図面を基礎として各手続きに必要な情報を追加していく方法が効率的です。
風俗営業許可ではさらに詳細な図面が必要になる
接待を伴う飲食店などで風俗営業許可が必要になる場合は、深夜酒類提供飲食店営業よりもさらに詳細な確認が必要になります。
店舗の営業内容によって、
- 営業所
- 客室
- 厨房
- 出入口
- 照明設備
- 音響設備
- 防音設備
- 客室面積
などを確認しながら図面を作成します。
そのため、スナック、キャバクラなどを予定している場合は、単に飲食店営業許可の図面だけを作成するのではなく、最終的に必要となる許可まで考えて店舗設計を進めることが重要です。
図面作成の基本的な流れ
STEP1 営業内容を確認する
まず、どのような飲食店を営業するのか整理します。
提供する料理、酒類、営業時間、客席数などによって必要な設備や関連手続きが変わります。
STEP2 既存図面を確認する
不動産会社や内装業者から図面が提供されている場合は、その内容を確認します。
STEP3 現地を確認する
壁、柱、出入口、厨房など、図面と実際の店舗が一致しているか確認します。
STEP4 必要に応じて測量する
主要な寸法を測定し、店舗の形状を把握します。
STEP5 平面図を作成する
店舗の外周、壁、厨房、客席、トイレなどを作図します。
STEP6 設備を配置する
手洗い設備、シンク、冷蔵庫、食器棚などを記載します。
STEP7 設備名・寸法等を記載する
図面だけを見ても内容が分かるように整理します。
STEP8 保健所へ事前相談する
工事前に図面を確認してもらい、施設基準上の問題がないか確認します。
STEP9 完成後に現況を確認する
実際の店舗と図面を照合し、変更部分があれば修正します。
図面作成チェックリスト
□ 店舗全体の形状が分かる
□ 出入口が分かる
□ 厨房の位置が分かる
□ 客席の位置が分かる
□ トイレの位置が分かる
□ 従業者用手洗い設備が記載されている
□ シンクが記載されている
□ 冷蔵・冷凍設備が記載されている
□ 食器等の保管設備が記載されている
□ 調理設備が記載されている
□ 必要な設備名が記載されている
□ 実際の店舗と図面が一致している
□ 工事前に保健所へ相談している
よくある質問
Q. 図面はCADで作らないといけませんか?
CADでなければならないわけではありません。
重要なのは、店舗の構造や必要な設備を正確に確認できる図面になっていることです。
Q. 不動産会社の図面だけで申請できますか?
必要な設備がすべて記載されていれば利用できる場合もありますが、一般的な募集図面には厨房設備などが十分に記載されていないことがあります。
実際の店舗と一致しているかも確認する必要があります。
Q. 内装工事前でも図面を作れますか?
作成できます。
むしろ工事前に予定図面を作成して保健所へ相談することで、完成後の追加工事を防ぎやすくなります。
Q. 店舗完成後に設備位置が変わりました。図面はそのままで大丈夫ですか?
変更内容によりますが、提出図面と実際の店舗が異なる場合は修正や確認が必要になることがあります。
施設検査前に管轄保健所へ確認しましょう。
Q. 飲食店営業許可と深夜酒類の図面は同じですか?
同じ店舗の平面図を基礎として利用することはできますが、確認する内容が異なります。
警察署への届出では、営業所・客室の範囲や各種設備など、保健所用図面とは異なる情報が必要になる場合があります。
まとめ
飲食店営業許可の図面は、単なる店舗の間取り図ではありません。
保健所が、
「どのような店舗で」
「どのような設備を使用して」
「衛生的に営業できるのか」
を確認するための重要な資料です。
基本となるのは、
店舗全体
↓
厨房・客席
↓
手洗い・シンク
↓
冷蔵設備・保管設備
↓
その他の厨房設備
を実際の店舗に合わせて正確に記載することです。
特に重要なのは、工事完成後に初めて図面を作るのではなく、内装工事前の段階で図面を作成して保健所へ事前相談することです。
工事前に施設基準を確認しておけば、完成後の追加工事や開業延期を防ぎやすくなります。
また、バーやスナックなどでは、飲食店営業許可だけでなく、深夜酒類提供飲食店営業の届出や風俗営業許可が必要になることがあります。
これらの手続きでも店舗図面が重要になります。
最初に正確な平面図を作成しておけば、その図面を基礎として複数の許認可手続きを進めやすくなります。
飲食店の開業では、申請書だけでなく、店舗設計・現地確認・図面作成まで含めて準備することが重要です。
