自分の車でタクシー営業することはできますか?― マイカー営業の可否・必要な許可・違法になるケースを行政書士が徹底解説 ―

自分の車を使ってタクシーのように乗客を運び、料金を受け取ることはできるのでしょうか。いわゆる白タクが違法となる理由、個人タクシーとの違い、日本版ライドシェア、自家用有償旅客運送、必要な許可や二種免許、違法になりやすいケースまで、行政書士が法律初心者にも分かりやすく解説します。
自分の車でタクシー営業することはできる?
「自分の車で人を乗せて、お金をもらう仕事をしたい」
「空いている時間だけマイカーでタクシーのような仕事はできないの?」
「配車アプリを使えば普通の自家用車でも営業できる?」
このような疑問を持つ方は少なくありません。
結論からいうと、自分のマイカーを使って自由にタクシー営業を始めることは、原則としてできません。
道路運送法では、国土交通大臣の許可を受けずに自家用自動車を有償で旅客運送に使用することは、一定の例外を除いて禁止されています。
つまり、普通の自家用車にお客さんを乗せて、運賃や報酬を受け取る行為は、いわゆる「白タク」として違法になる可能性があります。
一方で、正式な許可を受けて個人タクシーを営業する方法や、タクシー事業者の管理下で自家用車を使用する「日本版ライドシェア」など、法律上認められた仕組みもあります。
重要なのは、「自分の車だから自由に使える」と考えず、どの制度を利用して旅客運送を行うのかを最初に確認することです。
「白タク」とは何か
一般的に「白タク」と呼ばれているのは、必要な許可を受けず、自家用車を使って有償で人を運ぶ行為です。
自家用車には通常、白地に緑色の文字のナンバープレートが付いています。
一方、タクシーやバスなどの事業用自動車には、基本的に緑地に白色の文字のナンバープレートが使用されます。
この違いから、無許可で自家用車を使ってタクシーのような営業を行うことが「白タク」と呼ばれています。
ただし、「白ナンバーの車で人を乗せたらすべて違法」という意味ではありません。
家族や友人を無料で乗せることまで禁止されているわけではありません。
問題になるのは、自家用車を使って「有償で旅客を運送する」場合です。
なぜマイカーで自由にタクシー営業できないの?
タクシーは単に人を車に乗せて目的地まで送る仕事ではありません。
乗客の生命や身体を預かる公共性の高い事業です。
そのため、道路運送法などによって、事業者、運転者、車両、運行管理などについて一定のルールが設けられています。
例えば、正式なタクシー事業では、安全な運行を確保するために車両の管理や運転者の管理などが求められます。
もし誰でも自由にマイカーでタクシー営業できるとすれば、
事故が起きた場合の責任はどうするのか
適切な保険に加入しているのか
運転者に必要な能力があるのか
車両が安全な状態なのか
適正な運賃なのか
といった問題が発生します。
このため、有償で人を運ぶ事業については一定の規制が設けられています。
マイカーで人を運ぶケースを比較
| ケース | 原則的な扱い |
|---|---|
| 家族を無料で駅まで送る | 問題なし |
| 友人を無料で送る | 問題なし |
| 友人とガソリン代などの実費を適切に分担する | 内容によって判断 |
| 不特定の客を募集して料金を受け取る | 原則不可 |
| SNSで客を募集して送迎料金を受け取る | 原則不可 |
| 個人タクシーとして正式に営業する | 必要な許可等を満たせば可能 |
| タクシー会社の運転者として営業する | 可能 |
| 日本版ライドシェアの制度内で運転する | 条件を満たせば可能 |
| 自家用有償旅客運送を行う | 制度上の要件を満たす場合に可能 |
「お金をもらったかどうか」だけで機械的に決まるものではなく、実際の運送の形態や対価の性質などを踏まえて判断されます。
自分の車で合法的に営業する方法は?
マイカーを利用して人を運ぶ仕事に関わる方法はいくつかあります。
ただし、それぞれ制度が大きく異なります。
方法1 個人タクシーとして営業する
自分自身でタクシー事業を行いたい場合にまず考えられるのが「個人タクシー」です。
個人タクシーは、個人が一人一車制で行うタクシー事業です。
しかし、「車と二種免許があれば今日から個人タクシーを始められる」というものではありません。
一般乗用旅客自動車運送事業として許可を受ける必要があり、営業区域、年齢、運転経験、法令遵守状況、資金、営業所、自動車車庫など、さまざまな条件を確認する必要があります。
そのため、一般的な個人事業の開業と比較すると、参入までのハードルは高くなります。
方法2 タクシー会社で運転する
自分自身がタクシー事業者になるのではなく、許可を受けているタクシー会社で運転者として働く方法です。
この場合、事業そのものの許可はタクシー会社側が取得しています。
運転者としては、原則として第二種運転免許など必要な資格・要件を満たす必要があります。
「人を乗せて運転する仕事がしたい」という目的であれば、自分で個人タクシー事業を始めるより現実的な選択肢となる場合があります。
方法3 日本版ライドシェアを利用する
近年、注目されているのが「日本版ライドシェア」です。
正式には「自家用車活用事業」と呼ばれる制度です。
タクシーが不足する地域や時間帯などにおいて、一定の条件の下、タクシー事業者の管理を受けながら自家用車などを使用して旅客運送を行う仕組みです。
ここで重要なのは、海外の一部地域で行われているような「個人が自由に配車アプリへ登録して独立して営業する制度」とは異なる点です。
日本版ライドシェアでは、タクシー事業者による運行管理や車両整備管理などの下で運送が行われます。
そのため、
「自分の車がある」
「普通免許がある」
「配車アプリに登録した」
というだけで、自由にタクシー営業できるわけではありません。
日本版ライドシェアなら普通免許でも運転できる?
従来のタクシー運転者には、原則として第二種運転免許が必要です。
一方、日本版ライドシェアでは、制度上の条件を満たした場合、第一種運転免許の保有者が運転者となる仕組みがあります。
ただし、第一種免許を持っている人なら誰でも自由に営業できるという意味ではありません。
タクシー事業者の管理下で運行することなどが前提となっています。
そのため、
「二種免許がないからマイカーで勝手に営業しよう」
ということはできません。
「普通免許で旅客運送ができる制度がある」という話と、「普通免許だけで個人営業できる」という話は全く別です。
自家用有償旅客運送とは?
もう一つ知っておきたいのが「自家用有償旅客運送」です。
公共交通機関だけでは十分な移動手段を確保できない地域などにおいて、市町村やNPO法人などが一定の要件の下で自家用車を使用して有償運送を行う制度があります。
代表的なものとして、
交通空白地有償運送
福祉有償運送
などがあります。
例えば、公共交通が十分でない地域で住民の移動手段を確保したり、単独で公共交通機関を利用することが難しい方の移動を支援したりするために利用されます。
これは一般の個人が「副業としてマイカーでタクシー営業をする」ための制度ではありません。
制度の目的、運送主体、利用対象者などについて条件があります。
個人タクシーを始める場合の基本的な流れ
個人タクシーとして独立開業する場合、大まかには次のような流れで準備を進めます。
STEP1 営業区域を確認する
まず、どの地域で個人タクシー営業を行うのかを決めます。
個人タクシーは営業区域ごとに取り扱われるため、自宅がある場所だけで判断するのではなく、希望する営業区域について確認する必要があります。
STEP2 申請者の要件を確認する
個人タクシーでは、年齢や運転経歴などについて審査基準があります。
これまでタクシーやバスなどの運転業務にどの程度従事してきたかなど、申請者自身の経歴が重要になります。
「今まで旅客運送の経験はないが、車の運転には自信がある」というだけでは許可取得が難しい場合があります。
STEP3 法令違反歴などを確認する
一定期間の交通違反や行政処分なども確認されます。
個人タクシーは旅客の安全に直接関係する事業であるため、運転経験だけでなく、これまでの法令遵守状況も重要です。
STEP4 営業所・車庫などを準備する
営業所や自動車車庫などについても要件があります。
自宅を営業所として使用したい場合でも、当然に認められるとは限りません。
使用権原、位置関係、地域の法令などを確認する必要があります。
STEP5 必要な資金を確認する
車両費、設備費、保険料、税金など、事業開始に必要な資金についても準備します。
単に許可申請手数料だけを用意すればよいわけではありません。
STEP6 許可申請を行う
要件を確認し、必要書類を整えて管轄する運輸局等へ申請します。
審査の中では、法令や安全運行に関する知識などが確認される場合があります。
STEP7 許可後の手続きを行う
許可が出ればすぐに何もせず営業開始できるわけではありません。
車両、保険、登録など必要な手続きを整え、適法に営業できる状態にしたうえで事業を開始します。
二種免許とは?
タクシーやバスなど、旅客を運送する目的で自動車を運転する場合に重要になるのが「第二種運転免許」です。
一般の方が自家用車を運転するために取得している免許は、通常「第一種運転免許」です。
例えば、
自分の車で買い物に行く
家族を病院へ送る
友人を駅まで送る
といった通常の運転は第一種免許で行えます。
一方、タクシーなどの旅客自動車を旅客運送のために運転する場合には、原則として第二種免許が必要になります。
ただし、先ほど説明した日本版ライドシェアなど、一定の制度では異なる取り扱いがあります。
「ガソリン代だけ」なら大丈夫?
よくある質問が、
「利益を取らず、ガソリン代だけもらえば大丈夫ですか?」
というものです。
これは金銭を受け取ったという事実だけで一律に判断できるものではありません。
友人同士のドライブで高速道路料金やガソリン代を実費で割り勘するような行為と、不特定多数の人を継続的に募集して「ガソリン代」という名目で実質的な運送対価を受け取る行為では、性質が大きく異なります。
名称だけを「謝礼」「ガソリン代」「協力金」などに変えても、実態として有償の旅客運送であれば問題となる可能性があります。
形式ではなく、実際にどのような運送を行い、どのような対価を受け取っているのかが重要です。
違法になる可能性が高いケース
ケース1 SNSで乗客を募集する
SNSに、
「新宿から羽田空港まで5,000円で送ります」
「深夜の送迎できます」
などと投稿し、自家用車で乗客を運んで料金を受け取るケースです。
必要な許可等がなければ、無許可の有償旅客運送として問題になる可能性があります。
ケース2 外国人観光客だけを相手にする
「日本人ではなく外国人観光客だけなら問題ない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、乗客が日本人か外国人かによって白タク規制がなくなるわけではありません。
空港や観光地などで外国人旅行者を集め、自家用車で有償送迎する場合も注意が必要です。
ケース3 料金ではなく「謝礼」を受け取る
乗車料金を3,000円と設定する代わりに、
「謝礼3,000円」
「協力金3,000円」
などと表現しても、それだけで合法になるわけではありません。
運送と金銭の支払いに実質的な対価関係がある場合には、名称を変えても有償運送と判断される可能性があります。
ケース4 ホテルや民泊の宿泊客を有料送迎する
宿泊施設の運営者が、
「宿泊者限定で空港まで3,000円」
などとして自家用車で送迎するケースも注意が必要です。
宿泊者だけを対象としていても、有償で旅客を運送する以上、道路運送法上の問題が生じる可能性があります。
宿泊サービスと送迎料金をセットにした場合についても、実態を踏まえた確認が必要です。
ケース5 知人だけを繰り返し有料で送迎する
「不特定多数ではなく知り合いしか乗せないから大丈夫」とは限りません。
特定の人だけであっても、継続的に運送を行い、その対価として料金を受け取っている場合には問題となる可能性があります。
無許可営業にはどのようなリスクがある?
無許可の有償旅客運送には、道路運送法上の罰則が設けられています。
また、刑事上の問題だけを考えればよいわけではありません。
事故が発生した場合には、保険契約の内容によって補償上の問題が生じる可能性もあります。
通常の自家用車として加入している自動車保険について、営業目的で有償旅客運送に使用した場合にも同じように補償されるとは限りません。
重大事故が起きれば、乗客に対する損害賠償の問題も発生します。
「少額の副業だから大丈夫」と安易に始めるにはリスクの大きい行為です。
マイカー営業を考えている方のチェックリスト
- 乗客から金銭を受け取る予定がある
- SNSやアプリなどで乗客を募集する予定がある
- 継続的に送迎を行う予定がある
- 送迎料金を自分で設定する予定がある
- 普通の自家用車をそのまま使う予定である
- 個人タクシーの許可を取得していない
- タクシー事業者の管理下ではない
- 日本版ライドシェアの制度を利用していない
- 自家用有償旅客運送にも該当しない
- 自動車保険が有償運送に対応するか確認していない
複数当てはまる場合は、営業を始める前に制度を確認する必要があります。
特に「マイカーがあるからすぐ始められる副業」と考えている場合は注意してください。
個人タクシーと日本版ライドシェアの違い
| 項目 | 個人タクシー | 日本版ライドシェア |
|---|---|---|
| 基本的な立場 | 自らタクシー事業を営む | タクシー事業者の管理下で運行 |
| 独立営業 | 可能 | 原則として自由な独立営業ではない |
| 車両 | 事業用車両 | 制度上、自家用車等を活用 |
| 運転免許 | 原則として二種免許 | 一種免許でも一定条件で可能 |
| 参入方法 | 許可要件を満たして申請 | 対象となるタクシー事業者等を通じて参加 |
| 営業できる範囲 | 許可された営業区域等 | 制度上認められた地域・時間帯等 |
| 主な目的 | 個人によるタクシー事業 | タクシー不足への対応 |
「自分の車を使いたい」という点だけを見ると似ていますが、法律上の仕組みは大きく異なります。
よくある質問
Q.自分の車で1日だけタクシー営業するのも違法ですか?
1日だけであれば自由に営業できるというルールはありません。
回数だけで判断されるものではなく、自家用車を有償で旅客運送に使用しているかなど、実態から判断されます。
Q.友達からお金をもらって送るのもダメですか?
友人同士でガソリン代や高速道路料金などの実費を分担するケースと、送迎の対価として料金を受け取るケースは分けて考える必要があります。
継続的に一定額を受け取って送迎している場合などは注意が必要です。
Q.普通免許しかありません。マイカーで人を運ぶ仕事はできますか?
日本版ライドシェアなど、一定の条件の下で第一種運転免許の運転者が自家用車を活用できる制度があります。
ただし、自分一人で自由にタクシー営業できるわけではありません。
Q.Uberなどのアプリを使えば白タクになりませんか?
アプリを利用していること自体で合法になるわけではありません。
どの制度に基づいて運送を行うのかが重要です。
配車アプリへの登録と、道路運送法上の営業資格は別の問題として考える必要があります。
Q.個人タクシーなら自宅を営業所にできますか?
要件を満たせば可能な場合があります。
ただし、営業所や車庫について基準があるため、「自宅だから必ず使える」というわけではありません。
申請前に営業区域や使用権原などを含めて確認する必要があります。
Q.車を買ってから個人タクシーの許可を申請した方がいいですか?
先に許可要件や車両要件などを確認することをおすすめします。
要件を確認せずに車両や設備へ多額の費用をかけると、申請条件を満たせなかった場合に大きな損失となる可能性があります。
Q.送迎を無料にすれば問題ありませんか?
無料で家族や友人を送迎する通常の行為まで禁止されているわけではありません。
ただし、別の商品やサービスの料金に実質的な送迎対価が含まれているようなケースでは、単に「送迎無料」と表示すれば必ず問題がなくなるとは限りません。
具体的な事業内容から判断する必要があります。
マイカーで人を運ぶ事業は「先に制度を決める」ことが重要
自分の車を使った仕事を考えると、
「車を準備する」
「乗客を募集する」
「料金を決める」
という順番で考えてしまいがちです。
しかし、旅客運送の場合は順番を逆にした方が安全です。
まず、
個人タクシーとして独立したいのか
法人タクシーとして事業を始めたいのか
タクシー会社で働きたいのか
日本版ライドシェアに参加したいのか
自家用有償旅客運送を検討しているのか
を整理します。
そのうえで、利用する制度に必要な許可、免許、車両、営業所、車庫、資金などを確認します。
先に車を購入したり、SNSで乗客募集を始めたりするのではなく、「自分がやろうとしている運送はどの制度に該当するのか」を確認することが大切です。
まとめ
自分の車を持っているからといって、その車で自由にタクシー営業を始めることはできません。
自家用車を使用して、必要な許可等を受けずに乗客を有償で運送すると、いわゆる白タクとして道路運送法上の問題となる可能性があります。
一方で、合法的に人を運ぶ仕事をする方法がないわけではありません。
個人タクシーとして許可を受けて独立する方法、日本版ライドシェアの制度を利用する方法、許可を受けたタクシー事業者で運転者として働く方法、自家用有償旅客運送の制度を利用する方法などがあります。
特に注意したいのは、「ガソリン代」「謝礼」「協力金」など名称を変えれば問題ないと考えないことです。
実際の運送内容と金銭のやり取りを踏まえて判断されるため、事業として送迎を始める場合は事前確認が重要です。
富森行政書士事務所では、運送事業に関する許認可についてご相談を承っています。
「この送迎サービスは許可が必要なのか」「自分が考えている事業はどの制度を利用すればよいのか」「運送事業を始めるには何から準備すればよいのか」など、事業開始前の段階からお気軽にご相談ください。
