以下では、相続財産の調査とは何かを、行政書士の実務に沿って、丁寧に解説いたします。
相続財産の調査とは
相続財産の調査とは、
被相続人（亡くなった方）が残した財産・負債のすべてを把握するために行う調査のことです。
相続では、
- どんな財産があるのか
- いくらあるのか
- 負債はあるのか
を正確に把握しないまま遺産分割すると、後から重大なトラブルにつながります。
そのため、相続手続きの初期段階で必ず行う重要な作業です。
相続財産調査の目的
① 遺産の全体像を把握し、正確な遺産分割を行うため
財産の漏れがあると、後から遺産分割協議をやり直す必要が出るため、慎重な調査が必要です。
② 相続放棄・限定承認の判断に必要
負債（借金）が多い場合は相続放棄も検討します。
→ 財産と借金の全容を知る必要があります。
③ 相続税申告の正確な計算のため
相続税の有無を判断するには、
遺産総額の把握が必須です。
相続財産調査の内容（実務的な項目）
以下の項目を丁寧に確認し、証明書等を取得していきます。
① 預貯金の調査
- 銀行口座の数と残高を確認
- 残高証明書の取得
- 定期預金・貯蓄性保険なども確認
※ 銀行は凍結されるため、手続きには正式な書類が必要です。
② 不動産の調査
- 法務局で「登記事項証明書」を取得
- 市区町村で「固定資産評価証明書」を取得
- 地番・家屋番号の調査
- 私道負担等の有無の確認
③ 有価証券（株式・投資信託など）
- 証券会社の口座照会
- 保有株式一覧の取得
- NISA・特定口座の確認
④ 生命保険（死亡保険金）
- 被相続人の加入保険を確認
- 契約内容の照会
- 死亡保険金の受取人を確認
※ 受取人固有の財産となる場合は遺産に含まれません。
⑤ 車両・船舶
- 自動車の所有者確認（車検証）
- 評価額の算出
- 船舶など特殊な財産の確認
⑥ 事業用財産・法人関係
- 個人事業主の場合：事業用口座、設備、在庫など
- 法人代表の場合：株式、役員貸付金の有無
⑦ 負債（借金）の調査
これが非常に重要です。
- 住宅ローン
- 消費者金融・カードローン
- 個人間の借金
- 未払い医療費
- 税金の滞納
- クレジットカード残高
※ 負債も相続対象であるため必ず調査が必要です。
⑧ その他の財産
- 貴金属
- 家財（価値あるもの）
- 電子マネー・ポイント
- 借地権・借家権
- 農地・山林 など
財産調査でよくある問題
✔ 通帳が見つからないケース
→ 銀行へ照会
✔ ネット銀行の存在が家族に知られていない
→ メールやスマホ、パソコンから調査
✔ 借金を家族に隠していた
→ 信販会社からの郵便物やカード請求で判明することも
✔ 不動産が複数の自治体にまたがる
→ 固定資産課税台帳で調査
相続財産調査の結果のまとめ方
- **財産目録（目録書）**を作成
- 不動産一覧
- 預貯金一覧
- 株式一覧
- 負債一覧
- 評価額
- 遺産分割協議書の基礎資料となる
行政書士の実務では必ず作成します。
まとめ
相続財産の調査とは、
相続対象となる財産・負債をすべて洗い出し、正確に把握する作業のことです。
- 遺産分割の基礎となり
- 相続税・相続放棄の判断にも直結し
- 相続トラブルの防止にもつながります
相続手続において最も重要な作業のひとつです。
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