倉庫業登録とは?必要なケース・施設基準・倉庫管理主任者・必要書類を行政書士が解説

倉庫を使って他社の商品や荷物を有料で預かる場合は「倉庫業登録」が必要になることがあります。倉庫業に該当するケース、貸倉庫との違い、1類・2類・3類・冷蔵倉庫などの種類、施設設備基準、倉庫管理主任者、必要書類、申請方法を行政書士が分かりやすく解説します。
倉庫業登録とは?必要なケース・施設基準・倉庫管理主任者・必要書類を行政書士が解説
「空いている倉庫を使って、他社の商品を預かりたい」
「EC事業者の商品を保管する物流倉庫を始めたい」
「レンタル倉庫やトランクルームを開業したい」
このような事業を始める場合に確認しておきたいのが「倉庫業登録」です。
一般的に「倉庫」と呼ばれている施設を使用するだけで、すべて倉庫業登録が必要になるわけではありません。
一方で、他人から荷物を預かり、保管責任を負って、その対価として料金を受け取る事業は、倉庫業法上の「倉庫業」に該当し、原則として国土交通大臣の登録を受ける必要があります。
倉庫業登録で特に注意したいのが、建物を借りてから申請を検討すると、施設設備基準を満たせず登録できない可能性があることです。
倉庫の種類によって求められる耐火性能、防湿性能、防犯設備などが異なるため、物件選びの段階から登録要件を確認することが重要です。
この記事では、倉庫業登録が必要になるケース、貸倉庫やレンタルコンテナとの違い、倉庫の種類、施設設備基準、倉庫管理主任者、必要書類、申請方法、2026年の制度変更まで行政書士が分かりやすく解説します。
倉庫業とは?
倉庫業法上の倉庫業とは、簡単にいうと「他人から預かった物品を倉庫で保管する営業」です。
ポイントは、
「他人の物品を預かる」
「倉庫で保管する」
「営業として行う」
という点です。
例えば、EC事業者から商品を預かり、保管料を受け取って物流倉庫で保管する事業は、典型的な倉庫業です。
メーカーから製品を預かって保管する場合や、企業の商品・原材料を保管する場合なども該当する可能性があります。
反対に、自社の商品を自社倉庫に保管するだけであれば、他人から物品の寄託を受けているわけではないため、通常は倉庫業登録の対象にはなりません。
倉庫業登録が必要なケースと不要なケース
「倉庫を使う=倉庫業登録」ではありません。
実際には契約内容や保管責任によって判断します。
| 事業内容 | 倉庫業登録 |
|---|---|
| 他社の商品を預かり、保管料を受け取る | 原則必要 |
| 自社の商品を自社倉庫で保管する | 原則不要 |
| 倉庫スペースだけを賃貸する | 原則不要 |
| レンタルコンテナとしてスペースを貸す | 原則不要 |
| 個人の家財を預かって保管責任を負う | 必要になる可能性あり |
| 運送契約に伴って荷物を一時保管する | 倉庫業に該当しない場合あり |
| コインロッカーで携帯品を一時的に預かる | 通常は対象外 |
特に判断が難しいのが「貸倉庫」と「営業倉庫」の違いです。
貸倉庫と営業倉庫は何が違う?
一般の方には非常に分かりにくい部分です。
貸倉庫
貸倉庫は、基本的に倉庫という「場所」を貸す事業です。
利用者が自分で荷物を入れ、事業者は荷物そのものについて保管責任を負わない形態が一般的です。
例えば、
「月額3万円でコンテナ1区画を利用できます」
というレンタルコンテナは、通常、スペースの賃貸借に近い契約になります。
このような場合は、原則として倉庫業には該当しません。
営業倉庫
営業倉庫では、事業者が荷主から荷物を預かり、保管責任を負います。
例えば、
「商品100ケースを1か月預かり、保管料5万円を受け取る」
という契約です。
単なる場所貸しではなく、物品の寄託を受けて保管するため、倉庫業登録の対象になります。
つまり、
「場所を貸しているのか」
「荷物そのものを預かっているのか」
が大きな判断ポイントになります。
トランクルームには倉庫業登録が必要?
「トランクルーム」という名称だけでは判断できません。
一般には、トランクルームという言葉が、
レンタル収納スペース
レンタルコンテナ
家財保管サービス
など幅広いサービスに使用されています。
倉庫業法上のトランクルームは、倉庫業者が一般消費者から家財、衣類、美術品などの物品を預かって保管するものです。
一方、利用者自身が荷物を出し入れする収納スペースを賃貸するだけで、事業者が物品について保管責任を負わない場合には、通常は倉庫業には該当しません。
したがって、
「トランクルームという名称だから登録が必要」
「レンタル倉庫という名称だから登録不要」
という判断はできません。
実際の契約内容と事業者が負う責任を確認する必要があります。
営業倉庫にはどんな種類がある?
倉庫業登録では、保管する物品や施設の構造によって倉庫の種類が分かれています。
代表的なものは次のとおりです。
| 種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 1類倉庫 | 幅広い物品を保管できる一般的な倉庫 |
| 2類倉庫 | 防火性能等の基準が一部緩和され、保管物品に制限がある |
| 3類倉庫 | 防火・防湿・遮熱性能等の基準がさらに限定され、保管物品の制限が大きい |
| 野積倉庫 | 木材・瓦などを屋外で保管 |
| 貯蔵槽倉庫 | 穀物などのバラ貨物や液体をサイロ・タンク等で保管 |
| 危険品倉庫 | 石油・化学薬品などの危険物を保管 |
| 冷蔵倉庫 | 一定の低温で保管する必要がある食品等を保管 |
| 水面倉庫 | 原木などを水面で保管 |
一般的な物流センターや商品保管倉庫では、1類倉庫を検討するケースが多くなります。
ただし、
「食品を扱う」
「危険物を扱う」
「屋外で保管する」
など、保管物品や保管方法によって必要な倉庫区分が変わります。
物件を探す前に「何を預かるのか」を決めておくことが重要です。
1類倉庫とは?
1類倉庫は、営業倉庫の中でも幅広い物品を保管できる倉庫です。
一般的な商品、原材料、機械、日用品などを保管する物流倉庫では、1類倉庫が候補になります。
その代わり、施設設備について比較的厳しい基準があります。
例えば、
・使用権原
・関係法令への適合
・土地の定着性
・外壁や床の強度
・防水性能
・防湿性能
・遮熱性能
・耐火性能
・災害防止設備
・防犯設備
などについて確認します。
単に「鉄骨造の大きな建物だから大丈夫」というものではありません。
建築確認関係書類や図面などから、施設が倉庫業法上の基準を満たしていることを確認していきます。
倉庫業登録では建物選びが非常に重要
倉庫業登録で最も重要なポイントの一つが物件です。
会社の役員や資本金だけを整えても、使用する倉庫が施設設備基準を満たしていなければ登録できません。
特に注意したいのが、
「先に賃貸借契約を締結してしまう」
ケースです。
例えば月額100万円の大型倉庫を契約した後に、
「この建物では予定していた1類倉庫の基準を満たせない」
と判明すると、大きな損失につながります。
倉庫物件を契約する前に、
用途
構造
確認済証
検査済証
図面
消防設備
防犯設備
などを確認しておくことをおすすめします。
倉庫管理主任者とは?
倉庫業を営む場合、倉庫ごとに原則として「倉庫管理主任者」を選任する必要があります。
倉庫管理主任者は、倉庫における火災防止や適正な施設管理などを行う重要な責任者です。
倉庫業者が自由に誰でも指定できるわけではなく、一定の実務経験や講習修了などの要件を満たす必要があります。
例えば、倉庫管理業務について一定期間の実務経験を有する者や、国土交通大臣の定める倉庫管理主任者講習を修了した者などが候補になります。
新規参入する会社では倉庫業経験者がいないことも多いため、講習受講によって要件を満たす方法を検討するケースがあります。
物件だけでなく、人員についても登録申請前から準備しておきましょう。
倉庫業登録の必要書類
実際の必要書類は法人・個人、倉庫の種類、建物の状況などによって異なりますが、主に次のような書類を準備します。
・倉庫業登録申請書
・倉庫明細書
・登記事項証明書
・役員関係書類
・宣誓書
・倉庫管理主任者関係書類
・倉庫管理主任者配置状況及び資格要件確認書
・倉庫の案内図
・配置図
・平面図
・立面図
・断面図
・矩計図
・建具表
・確認済証
・検査済証
・倉庫の使用権原を証する書類
・施設設備基準への適合を確認する資料
・その他倉庫の種類に応じた資料
冷蔵倉庫の場合には、冷蔵施設明細書や冷却設備関係資料なども必要になります。
倉庫業登録は、一般的な許認可と比較して建築関係資料の比重が大きい手続きです。
古い倉庫でも登録できる?
築年数だけで登録の可否が決まるわけではありません。
重要なのは、倉庫業法上の施設設備基準を満たしていることを資料によって確認できるかどうかです。
古い建物の場合、
確認済証が見つからない
検査済証がない
当時の図面が残っていない
現在の建物と図面が一致しない
増改築されている
といった問題が起こることがあります。
そのため、既存倉庫を借りて倉庫業へ参入する場合には、賃貸借契約前に建築関係資料がどこまで残っているか確認しておくことが重要です。
一級建築士による「確認表」とは?
倉庫業登録では、施設設備基準について申請者自身が確認するチェックリストのほか、一級建築士等が施設基準を確認する「確認表」を利用できる場合があります。
確認表を申請書類に添付することによって、施設設備基準に関する審査期間の短縮を図ることができます。
ただし、
「建築士が確認表を書けば、他の図面はいらない」
という制度ではありません。
申請に必要となる図面や添付資料は別途準備する必要があります。
行政書士が申請書類を整理し、建築士が建築・構造面を確認するなど、それぞれの専門分野を分担して申請を進めることが重要です。
倉庫業登録の申請先
東京都など関東地方で倉庫業を始める場合には、関東運輸局が関係する手続きとなります。
倉庫業登録は、市区町村役場へ提出する営業許可ではありません。
倉庫の所在地や営業所などを確認し、管轄する運輸局へ申請します。
また、営業開始後に倉庫を新設・増設したり、倉庫の種類や主要構造、保管物品などを変更したりする場合には、変更登録申請が必要になることがあります。
登録を取得した後も、施設変更時には事前確認が必要です。
倉庫業登録までの流れ
STEP1 事業内容を整理する
最初に、予定している事業が倉庫業に該当するか確認します。
単なるスペース貸しなのか、荷主から物品の寄託を受けて保管責任を負うのかを整理します。
STEP2 保管する物品を決める
何を保管するかによって必要な倉庫区分が変わります。
一般商品なのか、冷蔵品なのか、危険物なのかなどを確認します。
STEP3 倉庫の種類を決める
1類倉庫、2類倉庫、冷蔵倉庫など、事業内容に適した区分を検討します。
STEP4 候補物件を確認する
倉庫の構造、用途、確認済証、検査済証、図面などを確認します。
できれば賃貸借契約を確定する前に施設設備基準との適合性を確認します。
STEP5 倉庫管理主任者を確保する
倉庫管理主任者となる者の実務経験や講習修了状況を確認します。
要件を満たす人材がいない場合には、講習受講などを検討します。
STEP6 図面・必要書類を収集する
建物関係書類、法人関係書類、倉庫管理主任者関係書類などをそろえます。
不足している図面がある場合には、追加作成が必要になることもあります。
STEP7 登録申請を行う
必要書類をそろえ、管轄する運輸局へ登録申請を行います。
審査では、申請者に関する要件だけでなく、倉庫の施設設備基準についても確認されます。
STEP8 登録後に営業を開始する
登録を受けた後、必要な掲示や約款など営業開始に必要な準備を整え、倉庫業を開始します。
2026年4月から標準倉庫寄託約款が改正
倉庫業をすでに営んでいる事業者や、これから開業する事業者が確認しておきたいのが、2026年4月1日に施行された標準倉庫寄託約款の改正です。
倉庫業では、荷主との契約条件を定める倉庫寄託約款が重要になります。
標準倉庫寄託約款を使用している倉庫業者についても、最新の約款に対応しているか確認する必要があります。
これから倉庫業登録を行う場合には、施設や倉庫管理主任者だけではなく、営業開始後に使用する約款や料金等の掲示についても準備しておきましょう。
2026年から物流効率化法にも注意
物流業界では、倉庫業法だけでなく物流効率化法への対応も重要になっています。
2025年4月からは、荷主や物流事業者などに物流効率化に向けた取組について努力義務が課されました。
さらに2026年4月からは、一定規模以上の事業者が「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成や定期報告などが求められる制度が始まっています。
倉庫業者についても一定の基準を超える場合には「特定倉庫業者」として制度の対象になる可能性があります。
小規模な倉庫を開業するだけで直ちにすべての義務が課されるわけではありませんが、事業を拡大していく場合には倉庫業法だけでなく物流関連法令全体を確認することが重要です。
倉庫業開業前のチェックリスト
倉庫業を検討している方は、物件を契約する前に次の項目を確認してみてください。
□ 他人の物品を預かる事業である
□ 保管料などの対価を受け取る
□ 単なるスペース貸しではない
□ 保管する物品を決めている
□ 必要な倉庫区分を確認している
□ 倉庫の用途を確認している
□ 確認済証を確認した
□ 検査済証を確認した
□ 建物図面を入手できる
□ 賃貸借契約上、倉庫業として使用できる
□ 施設設備基準を確認した
□ 消防設備を確認した
□ 防犯設備を確認した
□ 倉庫管理主任者を確保できる
□ 営業開始時期から逆算して申請準備をしている
特に重要なのは「物件契約前の確認」です。
倉庫業登録では建物自体が審査対象になるため、一般的な会社設立後の許認可とは少し考え方が異なります。
倉庫業登録でよくある失敗例
実例1 倉庫を契約してから基準を調べた
物流事業を始めるため大型倉庫を借りたものの、登録申請の準備段階で施設設備基準の問題が判明するケースです。
賃貸借契約を解除できなければ、登録できない物件の賃料を払い続けることにもなりかねません。
候補物件の段階で確認することが重要です。
実例2 レンタル倉庫だから登録不要だと思っていた
「レンタル倉庫」というサービス名称だけを見て倉庫業登録は不要だと判断していたものの、実際には利用者から荷物を預かり、事業者が保管責任を負っていたケースです。
名称ではなく契約の実態で判断します。
実例3 自社商品の保管から他社商品の保管へ事業を拡大した
これまで自社商品だけを保管していた倉庫で、取引先の商品も預かって保管料を受け取るようになったケースです。
自家用倉庫として使用している間は倉庫業に該当しなくても、事業内容を変更することで倉庫業登録が必要になる可能性があります。
新規事業を追加するときは、既存の倉庫だから問題ないと判断せず確認しましょう。
倉庫業登録に関するQ&A
Q. 自社商品の保管だけでも倉庫業登録が必要ですか?
原則として必要ありません。
倉庫業は他人から寄託を受けた物品を保管する営業です。
自社所有の商品を自社倉庫で保管するだけであれば、通常は倉庫業には該当しません。
Q. レンタルコンテナには倉庫業登録が必要ですか?
単に収納スペースを貸し、利用者自身が荷物を管理する形態であれば、通常は倉庫業には該当しません。
ただし、事業者が荷物を預かって保管責任を負う契約になっている場合は判断が変わります。
Q. EC商品の保管代行は倉庫業になりますか?
EC事業者から商品を預かり、保管責任を負って保管料を受け取る場合には、倉庫業に該当する可能性が高くなります。
発送代行など他のサービスとセットになっている場合も、保管部分の契約内容を確認する必要があります。
Q. 普通の工場を倉庫として登録できますか?
建物が倉庫業法上の施設設備基準を満たしているか確認する必要があります。
現在の用途や建築関係書類なども関係するため、「空いている建物だからそのまま営業倉庫にできる」とは限りません。
Q. 倉庫管理主任者の資格試験はありますか?
倉庫管理主任者については、一般的な国家資格試験に合格して資格証を取得するという制度ではありません。
一定の実務経験や所定の講習修了など、定められた要件を満たす者を選任します。
Q. 倉庫業登録後に倉庫を増やせますか?
可能ですが、営業倉庫の新設・増設などについては変更登録申請が必要になる場合があります。
新しい倉庫を契約する前に必要な手続きを確認することをおすすめします。
Q. 行政書士に倉庫業登録を依頼できますか?
倉庫業登録申請書や添付書類の作成、官公署への申請手続きについて行政書士へ相談できます。
倉庫業登録では建築図面や施設設備基準の確認が重要になるため、必要に応じて建築士など他の専門家と連携して手続きを進めます。
倉庫業登録は物件契約前の確認が重要です
倉庫業登録は、会社を作って申請書を書くだけで取得できる登録ではありません。
特に重要なのが「どの倉庫を使用するか」です。
予定している事業が倉庫業に該当するのか。
どの種類の倉庫として登録するのか。
建物が施設設備基準を満たしているのか。
必要な建築関係書類が残っているのか。
倉庫管理主任者を確保できるのか。
これらを順番に確認する必要があります。
そのため、
「倉庫を借りてから行政書士に相談する」
よりも、
「候補物件を見つけた段階で登録可能性を確認する」
方が安全です。
特に大型倉庫は賃料も高額になりやすく、契約後に登録できないことが判明した場合の損失も大きくなります。
富森行政書士事務所では、倉庫業をはじめ、事業開始に必要となる各種許認可についてご相談いただけます。
「自分の事業が倉庫業に該当するか分からない」
「この物件で倉庫業登録ができるか確認したい」
「EC事業者向けの保管・発送代行を始めたい」
「倉庫管理主任者や必要書類について確認したい」
といった場合には、物件契約や設備工事を進める前に必要な手続きを整理しておくことをおすすめします。
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