「保育園を開業するには?」認可保育園と認可外保育施設の違い・開設要件・手続きを行政書士が分かりやすく解説

保育園を開業するには何が必要?認可保育所と認可外保育施設の違いから、施設・職員・保育士配置などの開設要件、自治体への認可・届出、物件選び、開業までの流れを行政書士が分かりやすく解説します。これから保育事業への参入を検討している法人・個人事業主の方はぜひ参考にしてください。

目次

「保育園を開業するには?」認可保育園と認可外保育施設の違い・開設要件・手続きを行政書士が分かりやすく解説

「自分で保育園を開業したい」

「会社で従業員向けの保育施設を作りたい」

「小規模な保育施設なら簡単に始められる?」

保育事業への参入を考えたとき、最初に理解しておきたいのが「保育園にはいくつかの種類があり、必要な手続きや基準がそれぞれ違う」ということです。

特に重要なのが、いわゆる「認可保育園」と「認可外保育施設」の違いです。

認可を受けずに開業するからといって、認可外保育施設なら自由に営業できるわけではありません。認可外保育施設にも届出や安全・保育内容に関する基準があり、行政による報告徴収や立入調査などの指導監督を受けます。東京都でも、認可外保育施設は指導監督基準を満たして運営することが求められています。

さらに、保育事業では物件を借りてから「この建物では予定していた保育園を開設できない」と判明すると、大きな損失につながります。

この記事では、保育園の種類から開設要件、物件選び、必要な手続き、開業までの流れまで、初めて保育事業を始める方にも分かりやすく解説します。

そもそも「認可保育園」とは?

一般的に「認可保育園」と呼ばれているものは、児童福祉法に基づく「保育所」を指します。

国が定める基準を踏まえ、職員配置や施設設備などの基準を満たして認可を受けて運営されます。

そのため、「空いているテナントを借りて、保育士を何人か雇えば認可保育園を開業できる」というものではありません。

施設の設備、職員配置、運営体制などについて、さまざまな要件をクリアする必要があります。

また、実際の認可手続きでは自治体との事前協議が非常に重要です。

認可外保育施設とは?

認可外保育施設とは、児童福祉法上の保育所等の認可を受けていないものの、乳幼児を保育することを目的とする施設です。

「無認可保育園」と呼ばれることもありますが、現在は「認可外保育施設」という呼び方が一般的です。

認可外だからといって、法律の規制を受けないわけではありません。

例えば東京都では、認可外保育施設を新設すると、原則として事業開始の日から1か月以内に設置届を提出する必要があります。変更や休止・廃止についても原則1か月以内の届出が必要です。

また、施設は行政による指導監督の対象となります。

認可保育園と認可外保育施設の違い

まずは大きな違いを整理してみましょう。

項目認可保育所認可外保育施設
法的位置付け児童福祉法上の認可施設認可を受けていない保育施設
開設手続き認可が必要原則として届出が必要
設備認可基準への適合が必要指導監督基準等への適合が必要
職員配置基準あり基準あり
行政との調整非常に重要必要
開設の自由度比較的低い比較的高い
行政による監督ありあり
保育料公的制度との関係が強い施設側で設定する形が中心

認可外保育施設は認可保育所より柔軟な運営ができるケースがあります。

例えば夜間保育や独自の教育プログラムなど、特定のニーズに対応した施設を作ることも考えられます。

一方、安全性や保育水準に関する基準まで自由になるわけではありません。

保育園を始める前に決めるべきこと

保育園開業では、最初に「どのような施設を作るのか」を具体的に決める必要があります。

例えば、

・0歳から預かるのか

・対象年齢は何歳までか

・定員を何人にするのか

・通常保育だけか

・夜間保育を行うのか

・一時預かりを行うのか

・従業員向けの施設なのか

・地域の子どもも受け入れるのか

などです。

この事業計画によって、必要な施設面積や職員数、設備、手続きなどが変わります。

「とりあえず物件を探してから考える」という順番はおすすめできません。

保育園は個人でも開業できる?

「保育園を作るには株式会社や社会福祉法人でなければならない」と思われることがあります。

しかし、施設の種類によって設置主体に関する条件は異なります。

例えば認可外保育施設については、個人が設置者となるケースもあります。東京都が公開している認可外保育施設設置届も、設置者として法人・団体だけでなく個人を想定した様式となっています。

一方、認可保育所等では制度や自治体によって設置主体、募集条件などを確認する必要があります。

法人化を検討している場合は、保育園の種類を決めてから会社設立を進めた方がよいでしょう。

保育園開業で特に重要な5つの要件

1 職員配置

保育施設では、預かる子どもの年齢や人数などに応じて必要な職員を配置します。

特に乳幼児は年齢によって必要な保育体制が大きく異なります。

「定員20人だから保育士を○人採用すればいい」と単純に決めるのではなく、年齢構成や開所時間なども踏まえて人員計画を作る必要があります。

また、長時間営業する施設では、職員の休憩、休日、シフトまで考えなければ実際の運営が成り立ちません。

2 施設の広さ

保育施設には、保育室などについて一定の設備・面積基準があります。

必要な面積は施設の種類、児童の年齢、人数などによって異なります。

物件情報に「100㎡」と書かれていても、その100㎡すべてを保育に必要な有効面積として扱えるとは限りません。

トイレ、廊下、事務スペース、収納などを考慮して計画する必要があります。

3 安全対策

保育施設では子どもの生命・身体を預かります。

そのため、一般的な事務所や店舗以上に安全面を慎重に確認する必要があります。

避難経路、防火設備、転落防止、乳幼児の睡眠時の安全、事故防止など、施設と運営の両面から安全対策を整えます。

4 衛生管理

乳幼児が長時間過ごす場所であるため、衛生管理も重要です。

手洗い設備、トイレ、調理や食事を行う場所などについて、施設の運営方法に応じた環境を整える必要があります。

給食をどのような方法で提供するかによっても確認事項が変わります。

5 保育内容・運営体制

施設だけ整えれば開業できるわけではありません。

保育内容、職員体制、緊急時の対応、保護者への説明など、実際に子どもを安全に預かるための運営体制を作る必要があります。

保育園開業で物件選びが重要な理由

保育園開業で特に失敗を避けたいのが物件選びです。

「広いから大丈夫」

「以前も店舗だったから使える」

「大家さんから保育園利用の了承をもらった」

これだけで契約を決めるのは危険です。

建築関係、防火関係、施設基準など、複数の観点から確認する必要があります。

賃貸借契約前に確認する

保育園として利用できない物件を契約してしまうと、

・内装工事費

・敷金、保証金

・仲介手数料

・毎月の賃料

などが無駄になる可能性があります。

候補物件が決まった段階で、自治体などへ事前相談を行うことが重要です。

STEP1 どの保育施設を開業するか決める

最初に施設形態を決めます。

認可保育所なのか、認可外保育施設なのか、企業主導型保育事業などを検討するのかによって、手続きは大きく変わります。

企業主導型保育事業は、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援する制度として設けられており、複数企業による共同設置や地域の子どもの受入れも可能とされています。

ただし、企業主導型保育事業は単に「会社が作る認可外保育園」というだけの制度ではありません。助成や募集状況を含め、開設時点の制度を確認する必要があります。

STEP2 自治体へ事前相談する

保育施設は自治体によって担当部署や手続きが異なります。

東京都内でも、認可外保育施設の指導監督権限が東京都から一部の区市へ移譲されています。東京都は2026年6月時点で、八王子市および児童相談所設置区について、各区市へ直接問い合わせるよう案内しています。

そのため、まず開設予定地を決め、担当する自治体を確認することが重要です。

STEP3 事業計画を作る

次に、

・定員

・対象年齢

・開所時間

・休園日

・保育料金

・職員数

・人件費

・賃料

・設備投資

・給食

などを具体化します。

特に保育事業は人件費の割合が大きくなりやすいため、定員だけで収支を判断しないことが大切です。

STEP4 候補物件を確認する

事業計画に合った物件を探します。

この段階で、自治体への相談や必要に応じた関係機関への確認を行います。

賃貸借契約や大規模な内装工事を先に進めるのではなく、「この物件で予定している保育事業ができるのか」を確認してから進めるのが基本です。

STEP5 職員を確保する

必要な資格者・職員数を確認して採用を進めます。

保育園では「開業した後に人を集めればいい」というわけにはいきません。

必要な人員を配置できなければ予定どおり開業できない可能性があります。

STEP6 内装・設備を整える

施設基準や安全面を考慮して内装工事を行います。

子どもの安全を確保するため、一般的な店舗内装とは異なる視点が必要になります。

特に工事費が大きくなる場合は、事前相談の結果を踏まえて設計することが重要です。

STEP7 認可・届出等の手続きを行う

認可保育所を設置する場合は、所定の認可手続きを進めます。

認可外保育施設の場合も、設置後に必要な届出を行います。

東京都では、認可外保育施設の事業開始日から1か月以内の設置届が義務付けられています。

「認可外だから行政手続きは不要」という認識は誤りです。

STEP8 開業後も基準を守って運営する

保育施設の手続きは開業して終わりではありません。

特に認可外保育施設についても、行政による報告徴収や立入調査などの指導監督の対象となります。(福祉情報ページ)

変更事項が発生した場合には変更届などが必要になることもあります。

継続的に基準を守って運営することが求められます。

認可外保育施設なら簡単に開業できる?

「認可は大変そうだから、とりあえず認可外で開業しよう」と考える方もいるかもしれません。

しかし、認可外保育施設も決して「自由に子どもを預かれる施設」ではありません。

東京都は、認可外保育施設について「認可外保育施設に対する指導監督要綱」に定める基準を満たす必要があると明示しています。

開業前から基準を確認して準備することが重要です。

保育園開業前のチェックリスト

□ 認可保育所と認可外保育施設の違いを確認した

□ 開設する施設の種類を決めた

□ 対象年齢を決めた

□ 定員を決めた

□ 開所時間を決めた

□ 自治体へ事前相談した

□ 必要な職員数を確認した

□ 保育士等の採用計画を立てた

□ 施設面積を確認した

□ 避難経路や防火設備を確認した

□ 給食の提供方法を決めた

□ 開業資金と運転資金を計算した

□ 必要な認可・届出を確認した

□ 賃貸借契約前に物件の適合性を確認した

実例1 空きテナントで認可外保育施設を始めたい

駅前の空きテナントを見つけ、定員15人程度の認可外保育施設を開業したいケースを考えてみましょう。

立地がよく家賃も予算内だったため、すぐに契約したくなるかもしれません。

しかし、先に確認すべきなのは、その物件が予定している保育施設として利用できるかどうかです。

必要な保育スペース、安全設備、避難経路などを確認し、自治体への事前相談を行ったうえで契約を進める方が安全です。

実例2 会社が従業員向け保育施設を作りたい

従業員の育児と仕事の両立を支援するため、会社が保育施設を設置するケースです。

この場合、認可外保育施設として設置する方法のほか、条件によって企業主導型保育事業などを検討することがあります。

企業主導型保育事業では、柔軟な保育サービスの提供、複数企業による共同設置、地域住民の子どもの受入れなどが制度上可能です。

ただし、制度や募集状況は変わる可能性があるため、最新情報を確認して計画する必要があります。

実例3 自宅の一部で小さな保育施設を始めたい

「数人だけ預かるなら届出もいらないのでは?」と考えてしまうケースです。

保育施設に該当するかどうかは、単純に人数だけで判断することはできません。

事業内容、預かり方、施設形態などから法令上の扱いを確認する必要があります。

小規模だから自己判断で始めるのではなく、開設予定地を管轄する行政機関へ確認しておくことが重要です。

保育園開業でよくある失敗

物件を先に契約してしまう

最も避けたい失敗の一つです。

保育施設として必要な基準を満たせなければ、大規模な追加工事や物件変更が必要になる可能性があります。

保育士を後から探せばいいと考える

開業直前に必要人数が集まらないと、開業スケジュールそのものに影響します。

事業計画の段階から採用について検討しましょう。

認可外なら届出不要だと思っている

認可外という名称から「行政の認可も届出も必要ない」と誤解されることがあります。

少なくとも東京都では、認可外保育施設の設置者について事業開始から1か月以内の設置届が義務付けられています。

内装工事を先に進める

行政との事前相談前に内装を完成させてしまうと、後から設備の変更が必要になる可能性があります。

図面の段階で確認を進めることが重要です。

Q&A

Q1 保育園を開業するのに資格は必要ですか?

施設の種類によって必要となる職員配置や資格要件が異なります。

「経営者本人が保育士資格を持っていなければ一切開業できない」と単純に決まるものではありません。

経営者の資格だけを見るのではなく、施設全体として必要な職員体制を整えられるか確認する必要があります。

Q2 認可外保育施設ならすぐ開業できますか?

認可保育所と比べれば開設方法は異なりますが、自由に開業できるという意味ではありません。

施設設備、安全、職員配置などについて基準を確認し、必要な届出を行う必要があります。

Q3 マンションの一室でも開業できますか?

物件によります。

賃貸借契約や管理規約だけでなく、施設基準、建築・消防関係など複数の観点から確認する必要があります。

「大家さんが許可したから大丈夫」とは限りません。

Q4 自宅で子どもを預かる場合も認可外保育施設になりますか?

預かり方や事業内容などによって判断する必要があります。

少人数だから当然に規制対象外になるとは限らないため、自治体へ事前に相談することをおすすめします。

Q5 認可外保育施設には行政の立入調査がありますか?

あります。

東京都でも認可外保育施設について報告徴収や立入調査などの指導監督を行うとしています。

Q6 保育園開業の相談はいつから始めるべきですか?

物件の契約前がおすすめです。

施設の種類、定員、対象年齢などを整理し、候補物件が出てきた段階で行政との事前相談を進めると手戻りを防ぎやすくなります。

Q7 行政書士に保育園開業を相談できますか?

行政書士は、法令上の業務範囲内で、保育施設の開設に伴う行政手続きや届出書類の作成、必要書類の整理などをサポートできます。

特に保育園開業では、事業計画と行政手続き、物件選びを並行して進めることが重要です。

建築、消防、労務、登記など他士業・専門家の業務が必要となる部分については、それぞれ適切な専門家と連携して進める必要があります。

保育園開業は物件契約前の準備が重要

保育園を開業する場合、最初に「認可保育所なのか、認可外保育施設なのか」など、どの制度で事業を行うのかを決める必要があります。

施設の種類によって、必要な設備、職員、行政手続きなどが異なるためです。

特に注意したいのが物件選びです。

保育園に適さない物件を先に契約してしまうと、追加工事が必要になったり、最悪の場合には予定していた場所で開業できなかったりする可能性があります。

「物件を契約してから行政へ相談する」のではなく、「事業計画を作る、行政へ相談する、物件を確認する」という順番を意識するとよいでしょう。

また、認可外保育施設であっても届出や指導監督の対象となります。「認可外=規制がない」というわけではありません。

富森行政書士事務所では、保育施設をはじめ、事業を始める際に必要となる各種許認可・届出についてサポートしています。これから保育事業への参入を検討されている方は、物件契約や内装工事を進める前の段階からご相談ください。

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