「親が小説を書いていた」
「配偶者が音楽活動をしていた」
「家族がイラストや写真を仕事にしていた」
このような場合、その作品の著作権は相続できるのかと疑問に思われる方は少なくありません。
著作権は、土地や預貯金のように目に見える財産ではなく、
存在に気づかれないまま相続が進んでしまうことが多い財産です。
その結果、相続後にトラブルになるケースも実務上少なくありません。
本記事では、法律に詳しくない方でも理解できるように、
- 著作権は相続の対象になるのか
- どのような手続きが必要か
- 相続放棄をした場合はどうなるのか
について、実例を交えながら行政書士の立場で解説します。
著作権とは何か
著作権の基本的な考え方
著作権とは、著作物を創作した人(著作者)が、その作品を保護し、利用するための権利です。
著作権法では、次のようなものが「著作物」とされています。
- 小説・エッセイ・詩
- 音楽(作詞・作曲)
- 絵画・イラスト・写真
- 映画・アニメ
- プログラム(ソフトウェア)
- ブログ記事や講演原稿 など
重要なポイントは、「創作性」があることです。
単なる事実の羅列や、誰が書いても同じ表現になるものは、
著作物に該当しない場合があります。
著作権は相続の対象になるのか
結論
著作権は相続の対象になります。
著作権は、民法上の「財産権」に該当し、
土地・建物・預貯金などと同様に、相続財産の一部として扱われます。
著作権には2種類の権利がある
著作権を相続の観点から理解するためには、
著作権が2つの異なる性質の権利から成り立っていることを知る必要があります。
① 著作権(財産権)
著作権(財産権)とは、著作物を利用して経済的利益を得るための権利です。
例として、次のような権利があります。
- 複製権(コピー・印刷)
- 公衆送信権(インターネット配信)
- 上映権・演奏権
- 翻案権(映画化・アニメ化など)
👉 この著作権(財産権)は相続できます。
② 著作者人格権
著作者人格権とは、著作者の名誉や人格を守るための権利です。
- 氏名表示権(本名・ペンネームを表示するか)
- 同一性保持権(内容を勝手に改変されない権利)
👉 著作者人格権は相続できません。
ただし、著作者の死後も、
相続人は「著作者人格権を侵害する行為をさせないよう求める立場」に立つとされています。
著作権はいつまで相続できるのか
著作権の存続期間
著作権(財産権)は、
著作者の死亡後70年間存続します。
この期間中は、相続人が著作権を管理し、
利用許諾を出したり、印税を受け取ったりすることができます。
70年が経過するとどうなるか
存続期間が終了した著作物は、
**パブリックドメイン(誰でも自由に利用できる状態)**になります。
著作権はどのように相続されるのか
実例①:小説家の父が亡くなった場合
- 父が小説を出版していた
- 出版社から印税が発生している
👉 父の死亡後、印税を受け取る権利は相続人に引き継がれます。
遺言書がある場合
- 遺言書の内容が最優先されます
- 著作権を特定の相続人に集中させることも可能です
遺言書がない場合
- 法定相続分に従って相続されます
- 著作権は相続人全員の共有状態になります
著作権が「共有」になると起こりやすい問題
著作権が共有になると、次のような問題が生じやすくなります。
- 作品利用に相続人全員の同意が必要
- 出版・映像化の話が進まない
- 印税の分配をめぐるトラブル
👉 このような事態を防ぐため、
生前に遺言書で著作権の帰属を明確にすることが重要です。
著作権と相続放棄の関係
相続放棄とは
相続放棄とは、家庭裁判所に申述し、
最初から相続人でなかったことにする制度です。
相続放棄をした場合
- 著作権も含め、一切の相続財産を相続しません
- 著作権だけを選んで放棄することはできません
実例②:借金が多いケース
- 被相続人に多額の借金がある
- 将来価値が不明な著作権がある
👉 相続放棄をすれば、
借金も著作権も引き継がないことになります。
相続放棄の注意点
- 期限は「相続開始を知った日から3か月以内」
- 放棄前に印税を受け取るなどの行為は注意が必要
※どの行為が「相続財産の処分」に当たるかは、
個別事情により判断されるため一概には言えません。
行政書士としての実務的意見
- 著作権は見落とされやすい相続財産である
- 共有状態はトラブルの原因になりやすい
- 遺言書による生前対策が非常に有効
まとめ
- 著作権(財産権)は相続の対象
- 存続期間は死亡後70年
- 遺言がないと共有になりやすい
- 相続放棄をすれば著作権も相続しない
- 生前対策が極めて重要
著作権の相続でお悩みの方へ
「うちの場合はどうなるのか分からない」
「遺言書にどう書けばいいのか知りたい」
そのような場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。
当事務所では、相続・遺言に関するご相談を承っております。
お気軽にお問い合わせください。


コメント